[ワシントン 4日 ロイター] – 米商務省が4日公表した7月の米貿易赤字は、前月比2.7%減の539億8900万ドルだった。輸出が持ち直す一方で輸入が減ったことが背景。市場予想は535億ドルだった。ただ焦点となっている対中貿易赤字は6カ月ぶりの水準に拡大した。 

6月の赤字は当初発表の551億5400万ドルから555億800万ドルに改定された。米国の貿易赤字はトランプ政権が発足した2017年初頭の464億ドルから増加している。 

7月は赤字が縮小したものの、政治問題化している中国に対する赤字(モノの貿易)は調整前で9.4%増の327億7500万ドル。中国からの輸入が6.4%増える一方で輸出が3.3%減った。季節調整後では対中貿易赤字は1.7%減。輸入と輸出の双方が減少した。 

1─7月は中国への輸出は18.2%減少、中国からの輸入は12.3%減少し、米中間の貿易が縮小していることが確認された。 

MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「通商を巡る制裁措置や関税措置が緩和される公算は小さく、 トランプ政権は貿易赤字の解消に向け一段の措置を打ち出す可能性がある」と指摘。「米国はこの貿易戦争で勝利していないようにみえる」と述べた。 

米国は1日、1250億ドル以上の中国製品に対して15%の関税を発動。中国も報復措置として750億ドル規模の米国製品に追加関税を課した。12月にはさらなる関税が見込まれている。 

欧州連合(EU)に対する赤字(モノの貿易)は過去最高水準に達した。EUからの輸入が過去最高額だった。ドイツに対する赤字は2015年8月以来の高水準だった。 

7月の貿易収支全体の内訳は、モノの輸出が0.9%増の1381億5700万ドルだった。ただ中国が大豆や牛肉、豚肉に追加関税を課したことから、輸出は向こう数カ月間で減る可能性が高い。中国商務省は8月上旬、中国企業が米国産農産品の購入を停止したと発表した。 

輸出のうち消費財は15億4900万ドル増加し、全体を押し上げた。資本財は8億3100万ドル増えた。自動車も増えた。一方で産業用資材と原料は17億1400万ドル減少。そのうち原油は5億1000万ドル減だった。 

RDQエコノミクス(ニューヨーク)の首席エコノミスト、ジョン・ライディング氏は「輸出と企業投資が軟調となっていることの背景には通商政策を巡る混乱があり、製造業部門の弱体化の大きな要因となっている」と述べた。 

モノの輸入は0.2%減の2118億2200万ドル。米政権が対中制裁関税の計画を発表して以降、企業は中国製品の在庫を積み上げたとみられ、8月はモノの輸入が増えたとエコノミストはみる。 

米中摩擦によって貿易赤字は乱高下している。輸出業者や輸入業者は報復関税の応酬の影響を抑えるために先手を打とうとしている。 

輸入のうち、資本財が15億0600万ドル減り、全体を押し下げた。資本財輸入が減ったことは、設備投資が第3・四半期も引き続き弱含むことを示唆する。設備投資は第2・四半期に、3年ぶりにマイナスへ転じた。 

一方、産業用資材と原料は8億6000万ドル増えた。うち石油製品が9億5300万ドル増だった。 

インフレ調整後のモノの貿易赤字は6億7300万ドル減の855億0900万ドルだった。第2・四半期の平均をやや上回っており、貿易が今期も国内総生産(GDP)を押し下げる方向に働くことを示唆した。貿易は第2・四半期GDPを0.72%ポイント押し下げた。第2・四半期GDPは年率で2.0%増と、前期の好調なペース(3.1%増)から減速。アトランタ地区連銀が算出している第3・四半期GDPは年率で1.7%増となっている。 

サービスの貿易黒字は7月に1億1700万ドル減の196億7500万ドルと、16年2月以来の低水準だった。サービスの輸入は過去最高水準に達した。