スペースXとは、どのような企業なのか。一言で表現するのは難しい。米航空宇宙局(NASA)と連携してロケット開発を進める宇宙開発企業であり、地球低軌道に無数の人工衛星を打ち上げ、世界中で通信サービスを提供している。いま話題のAI分野でも、対話型AI「Grok」が注目を集めている。オーナーはイーロン・マスク氏だ。同氏はEVメーカーのテスラの創業者であり、脳の神経細胞とコンピューターを接続するニューラリンクといったスタートアップも率いている。

これらはすべて最先端の企業であり、急成長を続けている。それだけではない。近い将来、人類が火星へ移住できるようにするため、スペースXはロケットブースターの再利用技術も確立した。マスク氏は型破りな人物として知られ、150歳まで長生きし、将来は火星に移住したいと公言している。これがすぐに実現するとは考えにくいが、本人はいたって真面目なようだ。

そのマスク氏が育てたスペースXが、明日(現地時間12日)ナスダック市場に上場する。これに先立ち、公開価格が11日に1株135ドルと決定した。約5億5,555万株を発行し、過去最大となる750億ドルを調達したことになる。発行済株式総数(130億8,000万株)に基づくと、上場時の時価総額は1兆7,700億ドルに達する計算だ。

日本円に換算するのも躊躇するほどの巨大な規模である。ロイターによると、引受証券会社が追加売出の権利を行使すれば、時価総額はさらに増える可能性がある。この判断は通常、公開後30日以内に行われる。

異例なのはこれだけではない。ロイターによれば「スペースXは米東部時間午後3時(日本時間12日午前4時)すぎ、銀行団との価格決定会合を終え、米市場の取引時間中に米証券取引委員会(SEC)へ書類を提出した。そしてその30分後にプレスリリースを発表した」。

通常、発行体はマクロ経済の動向が価格に影響することを警戒し、価格決定会合とIPO(新規株式公開)価格の発表は、午後4時の通常取引終了後に行うものだ。不安定な世界情勢の中でのこの異例の発表は、マスク氏の「自信の表れ」と言えるだろう。

スペースXが今回調達した750億ドルは、過去最大のIPOである。ちなみに第2位はサウジアラビアのサウジアラムコで調達額は256億ドル、第3位は中国のアリババで218億ドル、第4位はソフトバンクグループで213億ドルである。これをグラフにすれば、スペースXの突出ぶりが一目瞭然だ。

とはいえ、1株135ドルという価格が適正かどうか、誰にも判断できない。ロイターはチェリーレーン・インベストメンツのパートナー、リック・メックラー氏の見解を引用し、「スペースXの価格設定は前例のない領域だ。需要に基づく通常の価格発見プロセスではなく、価格が先に決定されるのを見たのは初めてだ」と指摘。さらに、「個人投資家への配分を重視しており、彼らは価格に対してやや無頓着な面がある」とも述べている。期待が先行するバブル的な側面がある、というわけだ。

スペースXの公開価格が適正だったのか否か。現地時間12日に取引が始まるナスダック市場が、最初にその判定を下すことになる。