[ワシントン 26日 ロイター] – 米下院情報特別委員会は26日、トランプ大統領が来年の大統領選再選を視野にウクライナに圧力を掛けたとされる疑惑を巡り、当局者による内部告発の内容を公表した。 

告発者は、トランプ大統領が職権を乱用し、大統領選を有利に運ぶためにウクライナを選挙に介入させようとしたと指摘。「米国の国家安全保障への脅威」との懸念を表明し、「緊急を要する懸案」に当たるとした。 

さらに、ホワイトハウス高官を含む複数の政府当局者が電話会談の記録の「隠蔽」を図ったとも指摘。高官の1人は「国家安全保障に影響する内容は何ら含まれていない」とし、機密情報として扱うことに反対したという。 

また、トランプ大統領の顧問弁護士ルディ・ジュリアーニ氏が疑惑の中心的人物で、国家安全保障を巡る意思決定プロセスを回避し、ウクライナ政府とトランプ大統領の連絡役となっていたことは深い懸念としたほか、バー米司法長官が関与している可能性も指摘した。 

米司法省は前日、トランプ大統領が7月行ったウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談の記録を公表。記録からは、トランプ大統領が来年の大統領選で野党・民主党の有力候補と目されるバイデン前副大統領の息子に絡む疑惑の調査を依頼し、ジュリアーニ氏とバー司法長官と連携するよう促したことが明らかになっている。

告発書はさらに、電話会談の翌日に米国のカート・ボルカー・ウクライナ特使とゴードン・ソンドランド欧州連合(EU)大使がゼレンスキー大統領やウクライナ政府高官と会談し、「トランプ大統領の要求をどのように進めていくか」について助言したとしている。 

内部告発者は米情報機関関係者とされているが、身元は明かされていない。告発者は、告発内容の大半を「直接目撃したわけではない」とし、同僚から得た情報によると説明している。 

米紙ロサンゼルス・タイムズによると、トランプ大統領はスタッフに対し「告発者に情報を提供した人物を知りたい。スパイのようなものだ」と述べたという。 

ニューヨーク・タイムズは関係筋3人の情報として、告発者が米中央情報局(CIA)の諜報員の可能性があると報じた。 

下院情報特別委員会はこの日、同問題を巡り公聴会を開き、マグワイア国家情報長官代行が証言した。同氏は数週間にわたり内部告発書の公開を拒否してきた。 

同委員会のシフ委員長は公聴会に先立ち「この告発は議会に報告されるべき内容だった」と主張。公聴会の冒頭では、トランプ大統領が「大統領としての宣誓、国家安全保障を守るという宣誓、憲法を守るという宣誓を裏切った」と批判し、マグワイア氏に対し内部告発書を公表しなかった理由を説明するよう求めた。 

マグワイア氏は「法に基づき、自分の責務を果たした」とし、「大統領権限」を巡る懸念から告発書をすぐに公表しなかったと説明した。内部告発者については善意から行動したと確信しており、「法に則り正しい行動を取った」との考えを示した。 

内部告発者の主張を巡りトランプ大統領と協議したかとの質問には、大統領とは密に連絡を取っているとしつつも、直接的な回答は控えた。 

内部告発書の公表を受け、トランプ大統領はツイッターへの投稿で反応。「民主党は共和党を破滅させようとしている」と批判し、「共和党よ、結束し必死に戦おう。米国は危機に瀕している!」と述べた。 

さらに、下院情報特別委の公聴会後には記者団に対し「民主党の行動は米国に泥を塗るようなもので、許されるものではない。法廷で合法的な方法でやめさせることができるはずだ」と怒りをあらわにした。 

トランプ大統領に対する弾劾調査を開始する方針を示したペロシ下院議長は記者会見で、内部告発書からトランプ大統領が事実の隠蔽を続けていたことが明らかになったと述べた。