[ロンドン 17日 ロイター] – 2020年1月に欧州連合(EU)から離脱するというジョンソン英首相の公約は、EUよりさらに長い歴史のある連合を、分裂の危機に追い込むかもしれない。イングランド、スコットランド、ウエールズ、北アイルランドという連合王国の解体だ。 

何世紀も独立を夢見てきたスコットランドの愛国者は、英国のEU離脱(ブレグジット)を、自分たちが王国から離脱するためのチケットだと考えている。地域政党スコットランド民族党(SNP)のスタージョン党首は近く、独立の是非を問う住民投票の準備に乗り出す見通しだ。 

同党は、前週の英総選挙でスコットランドの59議席中、80%に当たる47議席を獲得。2017年の前回選挙から11議席を上積みした。しかし、ジョンソン首相は再度の住民投票を拒否。住民の55%が独立に反対した14年の住民投票で、この問題は解決したとの立場だ。 

スコットランド独立は可能なのか。以下で検証する。 

<住民投票のタイミング> 

スコットランド独立派は、イングランドとは政治的に分離しつつあり、ブレグジットは憲法上の合意を根本的に変えると主張する。 

EUからの離脱を決めた2016年の国民投票では、スコットランド全域で残留派が上回った。ブレグジットによる経済的ダメージが表面化すれば、スコットランドのEU離脱反対派を勢いづかせる可能性がある。 

スコットランドが法的に有効な住民投票を再び行うには、英議会の認可が必要となる。スタージョン氏は14年の投票の根拠となったスコットランド法30条に基づき、投票を合法と認めるよう正式に議会に要請する方針だ。 

しかし、英政府はいかなる要請も拒否すると主張している。17年に同様の要請が提出された際も却下している。 

今回の総選挙の結果次第では、独立派はすぐに住民投票を行うチャンスがあった。SNPが野党・労働党を支援するのと引き換えに、新たな住民投票の実施を要求できたからだ。 

次の重要なタイミングは、スコットランド議会の解散期限が来る2021年になりそうだ。SNPが過半数を取れば、政治的、倫理的に新たな住民投票を実施する権利を主張できる。 

スコットランド自治政府首相でもあるスタージョン氏は11月、21年の選挙でSNPがスコットランド議会を制すれば、住民投票を実施する「民主的な委任」を付託されたことになると発言している。 

<本当に違法なのか> 

自治政府の首都エディンバラでの議会設置を定めた1998年スコットランド法のもとでは、英議会が「スコットランドとイングランドの王国連合」の物事を決めることになっている。スコットランド独立の是非を問う住民投票は、英議会が認可した場合のみ実施できると広く解釈されている。 

しかし、裁判で争われたことはなく、法曹界や学者の中には、スコットランド議会には住民投票を行う権限があると主張する向きもある。 

スコットランド行政府のラッセル憲法相はさきごろ、「すべての選択肢がテーブルにある」と述べ、裁判で争う可能性を排除しなかった。 

<強行という選択肢> 

SNPのスタージョン党首は、正当に認められた住民投票を通じてのみ英国からの離脱を模索すると語ったことがある。しかし独立派は、英議会の許可なしに投票を実施するよう、圧力を強めている。 

英議会の承認なくスコットランドが住民投票を行った場合、北東部カタルーニャ自治州を巡ってスペインで起きたような怒りと混乱に見舞われる可能性がある。カタルーニャ自治政府が2017年に実施した投票に対し、スペイン政府は違法だと主張した。 

スタージョン党首のアドバイザーだったケビン・プリングル氏は先週末のサンデー・タイムズ紙で「ジョンソン政権がノーと言っても、法的な手続きに則って進める合理的なケースはあり得る」と語った。 

だが、これだとスコットランドの住民の多くが望むEU加盟は難しくなるかもしれない。違法に英国から分離したスコットランドのEU加盟を、スペインは拒否するだろう。カタルーニャの分離独立派を勢いづかせるかもしれないからだ。 

(翻訳:久保信博、編集:田頭淳子)