経済対策法案に署名するトランプ米大統領(27日、ワシントン)=AP

経済対策法案に署名するトランプ米大統領(27日、ワシントン)=AP

【ワシントン=河浪武史】トランプ大統領は27日、米議会が可決した新型コロナウイルスに対処する2兆ドル(約220兆円)の大型経済対策法案に署名し、同法は同日成立した。家計への現金給付や企業の給与支払いの肩代わりなどに取り組む。売上高の急減や生活の困難に直面する企業や個人への「安全網」を整備するのが柱だ。過去最大の経済対策で景気を早期に立て直すV字回復シナリオを描く。

景気対策は国内総生産(GDP)の1割で「規模は過去最大だ」(トランプ大統領)。当初は1兆ドル案で着手したが、米経済は4~6月期に2桁のマイナス成長に転落するとの観測が強まる。財政支出の規模は一気に2倍になり、リーマン・ショック時(2008年)の7千億ドルを大きく超えた。

リーマン危機時の経済対策は金融機関への公的資金注入が柱だったが、今回は企業と家計に直接大量のマネーを注ぎ込む。家計には大人に最大1200ドル、子供にも500ドルを支給する。年収7万5千ドル以上の個人は給付額を縮小し、同9万9千ドル超は対象外とする。

労働者の多くはレイオフ(一時帰休)や無給休暇を余儀なくされており、家賃など短期的な生活費を補填する狙いがある。失業給付も週600ドルを加算。家計への直接支援は5000億ドル規模になりそうだ。

中小企業向けに3500億ドルの融資枠も用意する。中小企業が雇用と給与を維持すれば、連邦政府への返済を不要にする仕組みで、事実上の給与の肩代わり策だ。期限は6月末までとする。

企業の救済にはさらに5000億ドルを用意する。750億ドル分は財務省が直接管轄し、航空会社に580億ドルを充てる。170億ドルは「安全保障に重要な事業」に資金支援するが、念頭に置くのは航空機大手のボーイングだ。ただ、民主党の要求で750億ドル分の使途は議会が監視し、自社株買いや経営陣の報酬増に使うことも禁じた。資金の自由度が狭まり、大企業が政府支援を敬遠する可能性もある。

残る4250億ドル分の多くは原則、米連邦準備理事会(FRB)の「政府保証」に充てる。FRBが設立するファンドに財務省が出資し、それを原資に大企業や州政府などにFRBが融資したり社債を買ったりする仕組みだ。一定のレバレッジを利かせることが可能なため、新たに資金供給できる枠は「4兆ドル規模になる」(ムニューシン財務長官)。これはGDPの2割弱に相当する。

通常の景気対策は、雇用を生み出す巨額のインフラ投資などを盛り込むが、今回は一切見送った。新型コロナで経済活動が制約され、いくら財政支出しても需要も供給も積み上げられないためだ。

むしろ、今回は「短期的な経済ショック」(ムニューシン氏)には目をつむり、企業倒産を防ぐことで景気の長期悪化を避けることに主眼がある。米ゴールドマン・サックスは4~6月期は24%のマイナス成長を予測するが、感染拡大が収まれば7~9月は逆に12%のプラス成長と急回復を見込む。ムニューシン氏は「3カ月間の勝負だ」と強調する。

もっとも新型コロナの感染拡大に歯止めがかからなければ、飲食や宿泊などサービス業の事業停止が長引き、自動車などの生産再開も遅れかねない。経済対策には病院など医療体制の整備にも1400億ドルという多額の資金を投じ、新型コロナそのものの対策も増強する。

11月に大統領選を控えるトランプ氏は「復活祭(4月12日)までに経済活動を再開したい」と焦りを強めるが、同時に「今回は金融危機ではなく、保健危機、医療危機だ」と理解する。米国は感染者が8万人を超えて一国では世界最大となった。感染拡大と景気悪化という米国の「複合危機」は、同時に解決する必要がある。