EU首脳会議が5日間にわたった協議の末、懸案だった復興基金の創設で合意した。7500億ユーロ(約92兆円)の基金の内訳は、3900億ユーロが返済の必要がない補助金、残りの3600億ユーロが低利の融資となっている。当初計画では5000億ユーロだった補助金は3900億ユーロに削られたが、財政の健全化を旗印としているEUが補助金の交付に踏み切ったこと自体が画期的だ。財源も一部を共通債発行で賄う。これが実現したことによって遅れていた財政統合への可能性にも道が開かれた。27の国の首脳が集まって導き出した結論は、EUの将来に一筋の光明を見いだした。とはいえ、政治統合を含めたEU一体化の道は果てしなく遠い気がする。

ドイツとフランスが提案した復興基金を巡って、財政規律を重視する倹約国4カ国(オーストリア、オランダ、スウェーデン、デンマーク)が最後の最後まで抵抗した。日経新聞は業を煮やした仏のマクロン大統領が最終局面で、「会議をどうでもいいと思っているんだ」とオーストリアのクルツ首相を罵った、と伝えている。マクロン大統領の怒りが会議を動かしたかどうかは不明だが、これを機にEUは合意に向かって動き始めたのだろう。補助金枠は削られたが、財政健全化のたがをちょっと緩めて将来の結束を勝ち取った。英国の離脱や反EU派の台頭など、EUの将来は決して明るいとはいえない。過去最長の首脳会議に20分足りなかったとはいえ、5日間におよんだ首脳会議の成果は「歴史的な合意」(マクロン大統領)と言っていいだろう。

EUは27カ国の連合体である。歴史も違えば民族や習慣も違う国々が連合体を結成している。普通の国のように連帯感があるわけではない。そんな国々を統一するために、通貨や金融などやりやすい分野を先行させたという経緯がある。それが逆に加盟国を苦しめる結果になった。イタリアのようにコロナの経済対策を自前で発動できない国が現れたのである。そんな危機を前に5日間にわたって首脳が議論して解決策を導き出した。EU首脳の粘り強さは驚嘆に値する。ひょっとするとEUの前に立ち塞がる難問は同じように時間をかけて解決されるのかもしれない。今回EUは問題解決の一つのスタイルを世界に向かって提示した。民主的な解決には時間がかかる。それをいとわないというスタイルだ。