RCC中国放送

 今、知っておきたい情報をわかりやすくお伝えする「イマシリ!」。きょうのキーワードは、『#EじゃなくてもAじゃないか すったもんだの発売日』。

 みなさんのお手元に配りました缶ビール。2日、発売された「サッポロ開拓使 麦酒仕立て」なんですけど、なにか違和感を感じませんか? この左にある「ラガー」のスペルは本来「LAGER」となるのですが、「E」が「A」になって間違っているんです。  普通、間違えたものは流通しませんが、今回、なぜ、間違った表記の缶ビールが全国で発売されることになったのでしょうか。そこには、ある広島の男性のダジャレが巻き起こしたイマドキらしい物語がありました。

 そもそもこのビールは、サッポロビールとファミリーマートが共同開発したものです。発表されたのは先月5日。両社は「1月12日に数量限定発売」としていましたが、その3日後、驚きの発表が続きました。「商品デザインに誤りがあったので、発売を中止する」―。

 誤りというのは、このAとEの違いだけ。ビールの品質や成分表示については問題がありませんでした。  この「発売中止」の対応に疑問の声をあげたのが、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんでした。井出さんは、発売中止発表の2日後、自身のフェイスブックでこのような投稿をしました。  

「SDGsでは世界の小売・消費レベルの食糧廃棄、半減を目標に掲げています。中身が大丈夫で健康被害がないのに発売中止にする必要があるのでしょうか?」―。  この投稿に反応したのが、広島市の中森さんという男性がコメントを返しました。  

 「もしも、わたしがこの担当者だったら、EじゃなくてもAじゃないかキャンペーンを展開します! あっという間に売り切る自信ありますけどね。つくる責任、つかう責任果たさなくちゃ。」―。  SNSらしいやりとりです。この「つくる責任、つかう責任」とは、SDGsで掲げられている17の目標のうちの12番目のもの。持続可能な生産活動と消費活動を目指そうというもので、「食品ロスを減らす」ことも重要なテーマの1つです。

 中森さんの「EじゃなくてもAじゃないかキャンペーンを」というコメントを見た食品ロス問題ジャーナリストの井出さんは、「ネーミングいいですね!」と返信。そして、その日のうちにそのタイトルでヤフーニュースの記事を書いたところ、大反響でトップ項目に上りました。ツイッターでも「EじゃなくてもAじゃないか」というハッシュタグがついたツイートが拡散しました。

 このキャッチコピーの産みの親、広島市の中森さんに話を聞いてきました。  「びっくりしています。通常だと既読のいいねが20個くらいついて、終わりなんですけども、次の日、起きたらえらいことになっていた。」(中森真太郎さん)  実は中森さん、ボールなどを製造するモルテンで広報室長を務める広報のプロです。3年前には、RCCの番組『元就。」に出演し、ホイッスルやボールを熱烈PR。今回の投稿の後で中森さんのもとにはたくさんの反響が届きました。

 「同僚が、メキシコに駐在しているやつから『たいしたもんじゃ焼き』って来てましたね。』(モルテン 広報室長 中森真太郎さん)  「中森さん、すごく仕事はまじめな方ですけど。」  「いつもギャグばかり言って、職場を盛り上げてくれる。ふだんはあんな方じゃないんですけどね。」(モルテンの社員たち)  周囲の盛り上がりに中森さんは戸惑いを隠せません。

 「いやあ、こんなことになるとは。本業で出たいです。」(モルテン 広報室長 中森真太郎さん)  中森さん自身も広報担当ですから、制作したカタログにミスを見つけて数千冊に訂正シールを貼った経験もあるそうです。誤表記が見つかったときのショックはよくわかると話していました。

 一方、この言葉は、中森さんの元を離れて、どんどん拡散。ネットでは、表示が誤ったままで販売することは食品表示法違反になるのではないかという声もありましたが、ある国会議員が消費者庁と国税庁の「法律違反にはあたらない」という見解を確認。12日に、これを再び井出さんが紹介したところ、さらにバズり、サッポロビールとファミリーマートの両社には発売を希望する声が多く寄せられ、ネット上では署名運動まで展開されました。

 その結果、発売中止が発表された5日後の先月13日、なんと発売中止が取り消しに。  今回の「EじゃなくてもAじゃないか」騒動とビールの販売について中森さんに感想を聞きました。

 「飲みます。SNSって、コロナの時期もそうなんですが、この近年、あまりいい話って聞いていなかったじゃないですか。逆に人を傷つける道具みたいな。そんな中で、今回SNSのいいところって全面に出て、1人の人間として、そこに携われたという部分ではすごくうれしいですけどね。」(モルテン 広報室 中森真太郎室長)