Peter Coy

  • 一帯一路のテクノロジー版「デジタルシルクロード」、5Gより成功
  • 深刻な脅威と米外交問題評議会の報告書-米国のTPP加盟を提言

中国の広域経済圏構想「一帯一路」は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で打撃を被った。中国外務省によれば、関連インフラ事業の2割で「深刻な影響」があった。ジブチやラオス、モルディブ、パキスタン、ザンビアなどが中国に関連融資の再交渉か返済免除を求め、キルギスとスリランカはすでに譲歩を引き出した。

  だが一帯一路がなくなるわけではない。米外交問題評議会(CFR)のタスクフォースがまとめた報告書によれば、中国はインフラ建設を若干減らし、デジタル技術により重点を置きながら、一段と厳しい貸し付け判断をするようになっている。

  23日に公表された190ページに及ぶこの報告書は、一帯一路を巡る米国の対応は「小さ過ぎ、遅過ぎる」としているだけでなく、「十把ひとからげに非難することでパートナーを遠ざけるリスクがある」とも指摘している。

  米国は華為技術(ファーウェイ)などの中国企業による第5世代(5G)移動通信ネットワーク機器の販売を禁止し、同盟国などに同様の対応をするよう促している。だがCFRの報告書は、移動通信網より中国がずっと首尾よく進めているのは一帯一路のテクノロジー版「デジタルシルクロード」だと明言している。アント・グループの「アリペイ(支付宝)」やテンセント(騰訊)の「ウィーチャットペイ(微信支付)」などのモバイル決済アプリがこれに含まれる。

  アントもテンセントも民間企業だが、両社は「国外事業拡大への国内の政治的支持を得るため、しばしば一帯一路もしくはデジタルシルクロードという看板を用い、一帯一路プロジェクトが提供する市場アクセスを利用している」と報告書は分析。中国が進めるブロックチェーン(分散型デジタル台帳)キャンペーンが成功すれば、米国の利益に深刻な脅威をもたらし得るとし、次のように論じている。

 中国の指導者はブロックチェーンのテクノロジーが未来の技術革新の基礎的インフラになると考えている。中国政府は2020年、ブロックチェーン・サービス・ネットワーク(BSN)を始めた。BSNは現在のサーバー保存スペースより割安な代替策をソフトウエア開発者に提供するため、ブロックチェーン技術をてこにするよう設計されている。多数の主要ブロックチェーンプロジェクトがBSNに加わっており、各自のチェーンをBSNに統合させ、より大規模で安価なBSN上で開発者がアプリケーションを生み出せるようにしている。こうした統合はまた、オーストラリアやブラジル、フランス、日本、南アフリカ、米国のネットワークインフラを中国の影響下に置く「国際的配管」を可能にする。

  CFRの報告書は「米国の経済、政治、気候変動、安全保障、世界のヘルス権益に重大な挑戦を突き付けている」のが一帯一路だとした上で、米国は中国に対抗するため、資金やプロジェクトの規模で競い合おうとすべきではないと主張する。

  米国はむしろ、単独もしくは有志国と共に「説得力のある代替案」を提供できる分野に焦点を絞るべきだとし、その具体策として、「世界銀行を再活性化し、一帯一路より良い代替策を提供できるようにすること」や、環太平洋連携協定(TPP)に加盟することを挙げている。トランプ前大統領は17年にTPPからの離脱を表明したが、米国を除く11カ国が参加した「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」が18年に発効した。

  (ピーター・コイ氏はブルームバーグ・ビジネスウィークの経済エディターです。広範な経済問題を取材しており、シニアライターを兼ねています)

原題:China’s New Belt and Road Has Less Concrete, More Blockchain(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)