1日100万回のワクチン接種が実現すれば、感染状況はどう改善するのか-。東大の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師の研究グループによるシミュレーションでは、東京都で9月に入ると感染者減少の効果が見え始め、再度の緊急事態宣言を出す必要がなくなるとの結果が示された。

 仲田氏らは政府目標である1日100万回に近い週650万回と、半分程度の週360万回という2つの接種ペースで東京都の感染者の推移を検証。変異株の感染力は1・4倍とし、期限通りに5月末で宣言解除し、その後は6週間かけて経済活動を昨秋の水準まで回復させると仮定した。

 その結果、週360万回では8月2週目に感染者が1669人に上り、4度目の宣言が発令される見通し。一方、週650万回ならば8月第4週の1026人をピークに減少に転じ、高齢者へのワクチン普及により医療逼迫(ひっぱく)を抑えられることを加味すると再宣言が不要になるとみている。週650万回の場合、累計死者数を13%ほど減らせるほか、経済損失を半分に抑えられるとも推計された。

 大阪府でも週650万回を達成できれば再度の発令が不要となった。ただ、東京都の場合は宣言期間中の経済活動や人流が昨年5月の水準、大阪府は昨年5月よりも低下していると設定されており、仲田氏は「1日100万回の接種を達成しても、(宣言期間中の)感染者数が横ばいであれば再度発令される可能性もある」と強調した。(石原颯)