暗号資産(仮想通貨)のビットコインが揺れている。原因はテスラの創業者であるイーロン・マスク氏の奔放な発言にある。中国で電気自動車の代金をビットコインで受け入れると発言して相場が急騰したかかと思えば、しばらくして今度はビットコインのマイニング(採掘)に膨大なエネルギーが消費されることを批判するツイートを投稿した。この間、ビットコインは急騰、急落と波乱の展開を余儀なくされた。それだけではない。他の暗号資産も軒並み大波乱となったのである。相場はマスク氏がビットコインを手放したのではないかとの噂でまたもや急落、当のマスク氏が「手放していない」とツイートして反転するなど、まるでマスク氏が相場を動かしているような展開になっている。こうした状況を称してブルームバーグは今朝、「イーロン・マスク氏はマッチポンプか」という記事を配信した。

この記事それ自体は特に意味があるわけではないが、一連の展開の中でおやっと思ったのはマスク氏のツイートだ。ロイターによると同氏は13日、ビットコインのマイニング(採掘)に膨大なエネルギーが消費されることを批判するツイートを投稿した。ドルや円などわれわれが通常使っている通貨は、中央銀行が流通量や発行量を管理している。これに対して暗号資産は、マイナーと呼ばれる人が当該通貨の維持管理を行なっている。マイナーが行う管理業務を総称してマイニング(採掘)と呼んでいる。マイナーには仮想通貨の価格に連動した報酬が与えられる。この報酬をめぐって世界中のマイナーが仮想通貨に殺到するのだが、競争が激しい上に最先端のコンピューター設備が不可欠で、維持管理するための支出も半端ではない。最大のコストは電気代。最先端のコンピューターを維持するためには莫大な電気代がかかる。

マイナーは電気代を節約するためにコストの安い中国や中央アジア、寒冷で冷却費用が割安な北欧などに巨大な設備を設置している。とはいえ、電気そのものは相変わらず化石燃料をベースにしているところが大半だ。環境派でもあるマスク氏は最近そこに気がついた。だから環境負荷の大きいビットコインの利用を取りやめるとツイートしたのである。ロイターでなくてもマッチポンプと言いたくなる。マスク氏のツイートを信じてビットコインを購入した人は目も当てられない。問題はそれだけではない。世界中がゼロカーボンに向けて動き出している。とりわけ中国は暗号資産の先進国だ。世界に先駆けて暗号資産の実証実験を始めている。その中国は世界最大のCo2排出国でもある。60年までにカーボンニュートラルを実現するという曖昧な目標を立てているが、具体論の提示はない。マスク氏は遠回しに中国を批判したのかもしれない。習近平主席の胸の内が気になる。