Gina Chon

[ワシントン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 米連邦準備理事会(FRB)は、強弱織り交ぜたデータが出ている物価動向について一貫して冷静な態度だ。実際、心配の種だった木材価格はつい最近下落したし、高騰してきた中古車価格も通常水準にほぼ戻るかもしれない。リスクがあるとすれば、楽観的になっているFRBがより長期的な物価圧力を見逃してしまうことだ。しかし新型コロナウイルスのパンデミックが引き続きデータを歪めている現状では「森を見て木を見ず」、つまり全体を俯瞰(ふかん)して細かい変動は無視しようとする姿勢は理にかなっている。

FRBは16日までの連邦公開市場委員会(FOMC)でこれまでよりタカ派的になったものの、その度合いは緩やかだ。事実上のゼロ金利政策と毎月1200億ドル規模の債券買い入れは維持した。一方、今年の物価上昇率見通しを3.4%に引き上げ、2024年以降と想定していた利上げは23年中に2回へ修正した。

入ってくる情報の振れが大きいことを踏まえれば、景気回復は当面ある程度足場がもろい存在として扱うのは筋が通っている。直近の指標は著しい物価上昇の兆しを示しているとはいえ、これは多くの経済活動がほとんど停止していた1年前の反動という面がある。その1つの例が5月の消費者物価指数(CPI)で、前年比上昇率は5%まで跳ね上がった。

FRBのパウエル議長は、パンデミック後の物価上昇の大半は一時的と見込んでいる。木材先物の7月渡しは5月に過去最高値を付け、インフレ懸念を象徴する動きになったが、それ以降で、価格は40%強も下がった。

中古車価格も乱高下する可能性がある。5月までの1年で価格は7.3%上昇。これは半導体不足で新車生産が減少したことが一因だった。しかしゼネラル・モーターズ(GM)は、年後半には供給が正常化すると予想しており、逆に価格が落ち着いてもおかしくない。5月の牛肉価格は2.3%上がったとはいえ、インデックスボックスによると、それは干ばつに伴って肉牛の頭数が減ったことを反映しているのかもしれない。

現在のFRBは物価抑制よりも雇用押し上げを重視しており、一部の市場関係者が懸念するように金融引き締めに動くのが遅すぎる事態となる恐れは残る。それでもデータから明確な結論が下せない以上、今のところ実体経済に悪影響を及ぼすのを避けるという主張には十分な妥当性がある。

●背景となるニュース

*FRBは16日に終わったFOMCで、政策金利の誘導目標を0-0.25%に据え置いた。最新のFOMCメンバーの政策金利見通しの中央値は、2023年中に2回の利上げを想定している。3月のFOMCで見込まれていた利上げは24年以降だった。