世界的に木材価格が高騰する「ウッドショック」の影響が広がっている。米国での住宅需要の高まりなどを背景に外国産材が値上がりし、国産材も不足してきたことで、住宅建築にも影響が出ている。国内林業には追い風となりそうだが、急激な需要の変化に対応できていない。

脱炭素は追い風 住友林業の光吉敏郎社長

 木材価格の高騰が顕在化し始めたのは今年3月ごろ。米国での新築住宅の増加に加え、新型コロナウイルスの影響から回復した中国でも木材需要が伸びたためだ。米国では製材価格がこの1年で3~4倍に値上がりした。世界的なコンテナ不足で輸送費も上がった。

 その影響は国内需要の6~7割を輸入に頼る日本を直撃した。輸入材が品薄となり、国産材にも波及。木造住宅の柱などに使う集成材はこの半年ほどで2割値上がりし、夏場には2倍になるとの見方も出ている。

 東京・木場などで木材商社を営む一條達雄さんは「今は買えるなら何でもいいという状況だ」と説明する。資材を確保できず工事が止まったり、調達費用が膨らみ資金繰りが悪化したりする工務店も出てきた。大手の住宅メーカーも「価格への影響を抑えるためコスト削減に尽くしている」と対応に苦慮する。

 一方、需要の伸びに対し、国産材の出荷量は追い付いていない。価格高騰がいつまで続くか見通せず、増産に踏み切る動きは限定的だ。林業関係者は「今は国産材への引き合いが強いが、価格が落ち着けば輸入材に戻るだろう」と警戒する。

 全国森林組合連合会の淡田和宏さんは「長らく林業不況が続き、人手不足で突発的な状況に対応できない」と話す。今回の好機を生かせないことが、国内林業の厳しさを浮き彫りにした形だ。

 淡田さんは「これを機に国産材を安定的に調達するところが増えてくれれば」と期待を込める。現在は4割を下回る木材自給率を高めることが、ショックへの耐性を強くすることにつながる。