[10日 ロイター] – フェイスブックとアルファベット傘下のグーグルはここ数年、規制当局や政界からの圧力を受け、世界各地の報道事業者に合計6億ドル(658億円)の支援を提供してきた。その多くはデジタル時代への対応に苦しむ地方・地域レベルの事業者だ。 

資金面やその他の支援を受けているメディア事業者は数千にも及ぶ。フェイスブック、グーグル両社の発表によれば、支援の内容はファクトチェックやニュース報道、研修に至るまで多岐にわたる。広告収益が急減する中で両社の支援が不可欠だとして感謝する事業者もある。

だが複数のメディアアナリストや報道機関幹部がロイターに語ったところでは、この3年間に提供された支援の金額は、両社がデジタル広告市場を手中に収めてしまったことでメディア事業者が失った数百億ドルもの収益を補うには程遠いという。市場調査会社eマーケターによれば、グーグルとフェイスブックは、米国における2020年のデジタル広告収益の54%を上げた。

それぞれ3億ドル規模の拠出を含む両社のプロジェクトは、ニュース事業者からの不満を緩和し、都合のいい宣伝効果を狙ったもので、意味がないとする批判もある。両社とも、ニュースコンテンツへの対価をめぐる訴訟だけでなく、規制当局やメディア事業者らによる反トラスト訴訟も世界中で抱えている。

米新聞大手ガネット傘下のUSAトゥデイの発行人でUSAトゥデイ・ネットワーク社長のマリベル・ペレズ・ワズワース氏は、フェイスブックが後援するファクトチェック・プログラムに参加しているが、両社が示している「その場凌ぎの大盤振る舞い」は焼け石に水にしかならない言う。「ニュース事業者が求めているのは、慈善行為ではない。私たちはただ、公正さと平等な競争環境を求めているだけだ」

コロンビア大学タウ・センター・フォー・デジタル・ジャーナリズムのエミリー・ベル所長は、報道機関にとって、短期的にはこうした資金支援が不可欠だと話す。「だが、現場に持続的な効果を与えるようなレベルの資金は提供されていない。実際には何も変わっていない」

グーグル、フェイスブック両社はロイターに対し、地方・地域レベルの報道機関への支援には真摯に取り組んでおり、6億ドル規模の支援策が数カ月後に終了した後も支援を続けると表明した。

フェイスブックで報道機関とのパートナーシップを担当するキャンベル・ブラウン氏によれば、「フェイスブック・ジャーナリズム・プロジェクト」と称する取組みでは、「今日のデジタル世界で成功するには非常に明確な読者を獲得する必要があり、(報道機関の)効果的なデジタル移行を支援する」ことを目標としていると語る。

またグーグルでグローバル・パートナーシップ担当ディレクターを務めるベン・モニー氏は、「質の高いジャーナリズムの健全かつ活発なエコシステムを確保する」方向を目指していると話す。

ロイターは、グーグル、フェイスブック両社が資金を拠出するプログラムに参加している。たとえば「フェイスブック・ジャーナリズム・プロジェクト」では、ロイターはジャーナリスト向けのデジタルメディア研修を開発するための資金を受けている。フェイスブック、ロイターともに提供された金額を開示していない。

フェイスブック、グーグル両社は、前述の6億ドル以外にも報道産業向けに資金を提供している。たとえば両社は、助成金や契約の形で世界中の幅広いメディアに支払うコンテンツの対価として、それぞれ10億ドルを計上している。グーグルはこうした支援の一環として、同社の「ニュース・ショーケース」向けのコンテンツの制作・編集を行う資金をロイターを含むメディアに提供している。「ショーケース」はグーグルのアプリ「ニュース」「ディスカバー」上で、それぞれの報道機関がニュースをまとめたパネルを見せるコンテンツだ。

企業財団であるトムソンロイター財団から資金の大半を得ているロイター・ジャーナリズム研究所は、グーグルから約1900万ドル、フェイスブックから400万ドルの助成金を獲得したことを2020年に発表した。

フェイスブック、グーグル両社は、サイト運営者は両社のプラットフォームを利用するだけでもアクセス件数を稼げるようになり、広告収益やサブスクリプションの増加という点でメリットを得られている、と述べている。

前出のブラウン氏は、「私たちのプラットフォームは、誰でもコンテンツを投稿できる無料サービスだ」と語る。ニュース事業者が参加していることは、「こうした追加投資をするまでもなく、私たちのプラットフォームが彼らにとって価値あるものだということを示唆している」

<資金の使い道は>

ソーシャルメディア最大手のフェイスブックと世界で最も人気のある検索エンジンであるグーグルは、決算書類によれば過去3年間で6070億ドルの広告収益を計上している。世界の報道産業にとって、両社は最大の出資者に数えられる。

助成金・サービスの形で提供される6億ドルがどのように使われるのか、両社はこれまでのところ限定的な情報しか公開していない。たいていは詳しい財務情報抜きで、おおまかな説明や例だけが示されている。

グーグルでは、約1億9800万ドルの支出について内訳を公表しており、その中には「ジャーナリズムの質の向上」のための8100万ドルが含まれている。内容は、報道現場におけるグーグルのサービスの利用方法に関する研修などだ。グーグルは年末までに3億ドルをすべて支出する予定で、6250社以上の「ニュース・パートナー」が同プロジェクトに参加している。顔ぶれは、AP通信からバズフィード・ニュース、南太平洋のクック・アイランド・ニュースまで多岐にわたる。

フェイスブックは、同社が予定していた3億ドルはすでに全額支出されており、その半分以上は地方ニュースの支援に充てられたとしている。フェイスブックが使途を公表しているのは8030万ドル相当で、その4分の1は、地方の報道機関によるデジタル購読者拡大を支援するプログラムに投じられている。フェイスブックで広報を担当するアダム・イサーリス氏によれば、プログラムにはニュース事業者との個別の契約も含まれており、秘密保持義務があるため詳細は明かせないという。

複数の報道機関幹部は、コンテンツにもっと多くの対価を支払い、オリジナルの報道をより優先するよう両社に求めている、と述べている。フェイスブックとグーグルは、まさにその方向をめざしてアルゴリズムを変更したとしている。

一方、ニュース事業者の中には、両社の支援を救いの手と見る向きもある。サウスカロライナ州チャールストンの「ポスト・アンド・クーリエ」の幹部によれば、コストを賄うために必要なデジタル購読者の規模や料金を見極めるのに、グーグルが出資する「ラボ」と呼ばれる研修が役に立ったという。

カリフォルニア州オークランドの非営利団体「シティサイド」の共同創業者ランス・ノーベル氏は、地方ニュースサイト「オークランドサイド」の立ち上げと運営のため、グーグルが拠出した1560万ドルを利用したと話す。

「健全なニュース環境が欲しい、というのが彼らの大きな関心事なのだと本当に思っている」と同氏は言う。

<敵か味方か>

一方で他のニュース事業者らは、不満を抱くか、愛憎の混じった複雑な感情を抱いており、両社は敵でもあり味方でもあると考えている。

グーグル、フェイスブック両社がニュースサイトの広告収益に与える影響は非常に大きい。ある記事がグーグルの検索結果やフェイスブックのニュースフィードにおいて上位に表示されるかどうかは両社のアルゴリズムによって決定されるからだ。

グーグルは世界最大級のオンライン広告取引所を運営しており、そこではソフトウェアを介してデジタル広告が自動で売買されている。だが、グーグル自身もこの取引所で最も規模の大きな買い手・売り手として競争に参加しているため、自らに有利になるように取引を誘導できるとの批判が一部のニュース事業者などから出ている。

米国単独でも、デジタル・印刷を合計した新聞社の広告収益は、2005年の494億ドルから、2018年には143億ドルへと減少している。

6月7日、グーグルはフランスの独占禁止法規制当局との和解に応じ、広告バイヤーと広範囲にわたってデータを共有することに合意した。グーグルにとっては、サイト運営者に対する競争優位の一部が失われることになる。

グーグルとフェイスブックは他にも訴訟を抱えている。ここ数カ月でも、米国の進歩派ニュースサイト「ザ・ネイション」とウエストバージニア州の新聞社HDメディアをはじめとするニュース事業者が、グーグル、フェイスブックの一方または両方に対して反トラスト訴訟を提起している。連邦当局も両社に対して反トラスト訴訟を起こしており、一部の州は、グーグルがオンライン広告配信プロセスにおいて違法に優越的地位を握っていると批判している。

一部の訴訟でグーグルとフェイスブックは、自社の事業活動がニュース事業者に損害を与えているという主張に反論している。グーグルは、人々が同社のサイトを利用するのは、強制されたからではなく、自主的な選択であると述べている。

だが、「シアトル・タイムズ」の発行人であるフランク・ブリーズン氏はそうは考えない。

同紙はグーグルとフェイスブックが支援するプログラムに参加しているという。

だがそれでも、「もし彼らが広告市場を独占せず、現状のように検索結果を弄んでいなければ、新聞各社は今でも利益を上げていただろう」と、ブリーズン氏は考えているという。

(翻訳:エァクレーレン)