[ワシントン 19日 ロイター] – 米商務省が19日発表した9月の住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で前月比1.6%減の155万5000戸となった。建設用資材や労働力の持続的な不足が住宅市場や経済活動全体を圧迫する中、市場の増加予想(162万戸)に反し減少し、4月以来の低水準となった。

8月の着工件数は、当初発表の161万5000戸から158万戸に下方改定された。

着工件数の先行指数となる9月の許可件数は前月比7.7%減の158万9000件と、1年ぶりの水準に沈んだ。

ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、ルビーラ・ファルーキ氏は「需要にはなおプラスの勢いがあるようだ」としつつも、投入コスト高や資材・人手不足を背景に「供給はもたついており、住宅建設業者への向かい風となっている」と指摘した。

主力の一戸建て住宅の着工件数は前月から横ばいの108万戸。地域別では北東部や南部で減少する半面、西部や中西部では増加した。

集合住宅の着工件数は前月比5.1%減の46万7000戸。

9月の許可件数は7.7%減の158万9000戸と2020年9月以来の低水準。一戸建て住宅の許可件数は0.9%減の104万1000戸、集合住宅が21%減の49万8000戸だった。

住宅完成件数は4.6%減の124万戸と、13カ月ぶりの低水準となった。一戸建て住宅の完成件数は横ばいの95万3000戸。不動産業者の試算では、在庫不足を補うためには一戸建て住宅の着工件数と完成件数が毎月150万─160万戸の水準を維持する必要がある。

建設中の住宅は1.3%増の142万6000戸。1974年2月以来の高水準となり、完成住宅との差が過去最大となった。

木材価格はここ数カ月で急落しているが、価格低下は建設業者にまで浸透していない。窓や遮断器などの建設用資材が不足している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による労働市場の混乱でサプライチェーン(供給網)が逼迫し、経済のあらゆる分野で価格が上昇している。

住宅着工は、14年半超ぶりの高水準だった3月の172万5000戸から減少。許可済みにもかかわらず、未着工の住宅が大量に滞留している。

全米住宅建設業者協会(NAHB)が18日発表した10月の住宅建設業者指数はさらに上昇したが、「建設業者は、完成時期の遅れにつながるサプライチェーンの混乱と労働力不足に引き続き取り組んでいる」と指摘した。

住宅市場はパンデミック初期に、在宅オフィスや在宅学習のためにより広い家を求め、都市部から郊外や人口が少ない地域へ移る動きによって盛況を示した。その追い風は、新型コロナワクチンの接種によって従業員がオフィスに戻り、学校が再開して対面式学習が可能となったことで弱まっている。

住宅ローンの金利は歴史的に見て依然低水準であるものの、借り入れコストの上昇で初回購入者にとって住宅により手が届きにくくなる可能性がある。7月の住宅価格は、前年同月に比べて2桁の伸びを記録した。