【ブリュッセル時事】エネルギー価格高騰などを背景に、欧州連合(EU)で原発活用の機運が広がっている。フォンデアライエン欧州委員長は22日、ブリュッセルでEU首脳会議後に記者会見し、「われわれには安定的なエネルギー源である原発が必要だ」と強調した。

 原発には一部加盟国に異論が残るが、フォンデアライエン氏は、温室効果ガスの排出量を2050年に「実質ゼロ」にする脱炭素社会の実現へ、再生可能エネルギーと共に活用を図る姿勢を明確にした。

 欧州委は4月、発電や交通、製造といったさまざまな経済活動のうち、温室ガス排出量など一定の基準を満たすものを気候変動抑制に寄与する「グリーン」な投資先として認定する枠組みを提案した。脱炭素化の資金を市場から呼び込むため、投資家や企業向けの指標とする狙いで、来年の運用開始を予定している。

 ただ、賛否が割れる原発と天然ガスをグリーン認定するかどうかは判断を先送りしており、近く示される見通しの追加提案の内容が焦点となる。

 EUでは大半を域外から輸入している化石燃料の高騰を受けて電気料金が上昇。安定的に発電できる原発の積極利用を求める声が拡大している。国内発電の約70%を原発に依存するフランスを中心にチェコ、フィンランドなど10カ国は今月、原発をグリーンな投資先に加えるよう共同声明で欧州委に訴えた。

 マクロン仏大統領は22日の会見で「原発への支持が首脳会議でこれほど明確に幅広く示されたことはなかった」と手応えを口にした。

 しかし、オーストリアやルクセンブルクは反対姿勢を堅持。ドイツも現政権は脱原発を主張してきた。退任を控えるメルケル独首相は22日の会見で「提案ができるだけ多くの人を満足させることを期待する」と欧州委に注文を付けた。今後は次期独政権の動向がカギを握りそうだ。