【イスタンブール時事】ウクライナ東部ドネツク州クラマトルスクの鉄道駅で多数の民間人が犠牲となった8日の弾道ミサイル攻撃で、ウクライナや欧米はロシア軍が撃ち込んだとみて、新たな「戦争犯罪」と厳しく非難し、責任を追及する構えを強めた。ドネツク州当局者によると、死者数は少なくとも52人となった。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は8日夜の声明で、「ロシアの新たな戦争犯罪であり、関与した全員が責任を問われる」と強調。「この戦争犯罪に対する断固とした世界的な対応を期待している」と語り、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャでの民間人殺害と同様にロシアを裁かなければならないと訴えた。駅は当時、女性や子供ら約4000人の避難民で混雑していたとされる。

 鉄道駅へのミサイル攻撃を受け、米欧の首脳からは「また一つロシアが恐ろしい残虐行為を犯した」(バイデン米大統領)、「市民を無差別に攻撃する戦争犯罪」(ジョンソン英首相)、「ロシア大統領はこれらの戦争犯罪に責任がある」(ドイツのショルツ首相)と非難が相次いだ。

 米国防総省高官は、ロシアが短距離弾道ミサイル「SS21」を使用したと分析。鉄道駅攻撃にはウクライナ軍への物資供給などを断つ目的があった可能性があると指摘した。一方、ロシア国防省は「攻撃はウクライナ軍が行った。住民を『人間の盾』として利用するため、大規模な避難を阻止することが目的だった」などと主張し、関与を否定している。

 ロシア軍が撤収したキーウ周辺では、犠牲者の発見が続いている。ウクライナ国営通信によると、キーウ近郊マカリフの町長は8日、射殺された民間人132人の遺体が見つかったと明らかにした。

 キーウを含む北部の制圧に失敗したロシア軍は東部の親ロシア派武装勢力の支配地域の拡大を狙い、総攻撃をかける可能性が指摘されている。英BBC放送は9日、欧米当局者の話として、ロシア軍が作戦指揮系統を再編成したと報道。ロシアが介入したシリア内戦などで豊富な経験を持つ司令官が現在指揮を執っており、「全体的な指揮統制の改善が予想される」とする当局者の見方を伝えた。

 ゼレンスキー氏は9日、キーウを訪問したオーストリアのネハンマー首相と会談。ウクライナ大統領府によると、対ロ制裁の強化やウクライナの将来的な欧州連合(EU)加盟について協議した。