リトアニアの首都ビリニュスの台湾代表処=7日
リトアニアの首都ビリニュスの台湾代表処=7日

 欧州でリトアニアの「中国離れ」と台湾接近が際立っている。リトアニアは昨年5月、中国と中東欧の経済協力枠組みを脱退。バルト3国の残るラトビア、エストニアも先月、追随して中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に打撃を与えた。ウクライナに侵攻したロシアと友好関係を維持する中国への懸念が欧州で広がる中、リトアニアの動きは、チェコなど他の欧州諸国と台湾との関係強化につながる可能性がある。

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 リトアニアに昨年11月、台湾の事実上の大使館「台湾代表処」が開設された。独立国のように映る「台湾」の名称が認められたことに、中国は猛反発して外交関係を格下げし、リトアニア産牛肉の輸入を停止する報復措置を取った。リトアニアはその後も台湾との交流を加速。バイシウケビチウテ運輸・通信副大臣が先月訪台すると、中国は運輸分野での交流を停止すると発表した。

 対中政策の転換には、現政権が民主主義や人権を尊重する「価値の外交」を掲げていることが背景にある。昨年12月に発表した国家安全保障戦略では、中国をロシアと並んで欧州に挑戦する権威主義国として位置付けた。一方で、民主主義の価値を共有する台湾との関係を強化している。

 ロシアに対抗する上でリトアニアは、北大西洋条約機構(NATO)率いる米国との関係を重視してきた。国際大学のヴィダ・マチケナイテ講師(中国政治)は「米主導の国際秩序に挑戦する中国の存在は、リトアニアの安全保障に対する新たな脅威」と説明。期待したほど中国からの投資や中国への輸出が増えなかったことも政策転換を促したと指摘する。21年の対中輸出額は約2億2700万ユーロ(約324億円)で、輸出総額の1%以下にすぎない。

 昨年12月にリトアニアで行われた世論調査では政権の対中政策への支持は13%にとどまっている。マチケナイテ氏は「国民は(政権の強硬策で)中国のもたらす経済的機会が、理由もなく失われるとみている」と分析する。中国が経済面で圧力を強めており、親台政策の継続は国民の理解を得られるかがカギとなる。

 こうした現状について、駐リトアニア台湾代表処の黄鈞耀代表も「台湾はリトアニアであまり知られていない」と認め、市民との交流に最善を尽くしていると強調。「理解が進めば、台湾を民主主義の価値を共有するパートナーとみるようになるだろう」と期待を込めた。