[東京 20日 ロイター] – 国土交通省が20日に発表した7月1日時点の都道府県地価調査(基準地価)によると、 全国の住宅地・商業地を含む全用途平均は前年比0.3%上昇し、3年ぶりにプラスに転じた。社会経済活動と新型コロナウイルス感染症の共存が進む中、低迷していた需要が回復に向かい、住宅地は31年ぶりに上昇に転じた。

都市部や交通の利便性の良いエリアでの需要が堅調で、住宅地は前年比0.1%上昇と1991以来、初めて前年を上回った。低金利環境の継続も需要を下支えした。

商業地は同0.5%上昇し3年ぶりのプラスとなった。個人消費の持ち直しにより店舗需要は回復に向かっている。観光地でも国内の来訪客による人流が回復しつつあり、上昇に転じた地点があった。

地価が最も高かったのは、17年連続で東京都中央区銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」だった。1平方メートルあたり3930万円で前年からは0.5%下落したが、国内観光客が回復傾向にあるため下落率は縮小した。政府による水際対策の緩和でインバウンド需要が見込まれ、今後、商業地を中心に需要が高まる可能性がある。

工業地は1.7%上昇し5年連続のプラス。引き続きeコマースが堅調に推移し、大型物流施設の用地への需要が旺盛で交通の便が良い地域で上昇率が拡大した。

半導体受託生産で世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC) の工場建設が進む熊本県菊陽町の工業地は31.6%上昇と、全用途で最大の上昇率だった。半導体関連の企業や運送、倉庫業などの進出が活発なため地価を押し上げた。

基準地価は各都道府県が毎年7月1日における調査地点の価格を調査・公表し、国土交通省が全国状況を取りまとめている。今回の調査地数は約2万1400地点。国交省が実施する地価公示(毎年1月1日時点の調査)と実質的に相互補完的な関係にある。