【図解】中国・インドの総人口と合計特殊出生率の推移
【図解】中国・インドの総人口と合計特殊出生率の推移

 【北京時事】中国の少子高齢化に歯止めがかからない。当局は長年の産児制限を段階的に緩和したものの、2021年の出生数は5年連続減少と、出産に慎重な風潮は強まるばかり。16日の共産党大会の政治報告でも出産支援策の拡充方針が示されるなど、習近平指導部にとって人口問題は喫緊の課題となっている。

 「中国の総人口は21~25年の間にマイナスへ転じる」。共産党の理論誌「求是」は8月、人口減に警鐘を鳴らす論文を掲載した。1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率は1.3を割り込んでいると指摘。これは日本を下回る水準だ。同誌は少子化が「最大のリスクだ」と警告した。

 国連は7月、中国の総人口が既に減少局面に入っており、来年にはインドに抜かれて世界2位に後退するとの予測を公表。19年の時点では31年まで増加が続くと見込んでいた。出生率の低迷などを背景に人口減の時期を大幅に前倒しした。

 国力の低下を招きかねない人口減に対し、習指導部も手をこまねいていたわけではない。1979年に導入された「一人っ子政策」でいびつになった人口構成の是正を目指し、16年までに段階的に2人目の出産を容認。21年には3人目を認めた。

 ただ、産児制限緩和は出生数の改善にはつながっていない。北京市の30代女性は「1人しか考えていない」と打ち明ける。夫婦の所得は同市の平均を上回るが、「子どもにきちんとした教育を受けさせたいので、2人目は難しい」と語った。

 中国メディアによると、中国で子ども1人を18歳まで育てる費用は1人当たり国内総生産(GDP)の約7倍。日本や米国の約4倍を大幅に上回る。

 焦りを募らせる習指導部は21年、高騰する教育費の抑制を狙い、営利目的の塾を原則禁止すると発表。今年は乳幼児の養育費を所得税から控除する対策も打ち出した。ただ、出生数が回復しても、経済成長を支える生産年齢人口(15~64歳)に達するには時間が必要。「対策が遅過ぎた」との不満は根強い。

 高齢化も重くのし掛かる。国家統計局のデータによれば、生産年齢人口が13年をピークに減少に転じた一方、総人口に占める65歳以上の高齢者の比率は12年の9.4%から21年には14.2%に上昇した。急速な少子高齢化は、近い将来にGDPで米国を逆転するとの見通しにも影を投げ掛ける。

 当局はロボットの活用などで生産性を上げ、競争力を維持する戦略を描く。ただ、米国がハイテク製品の輸出制限などで中国の封じ込めに動いており、技術開発の先行きは不透明だ。

 税収の落ち込みに伴う新たな財源の確保も急務となっている。東京財団政策研究所の柯隆主席研究員は、年金の支給開始年齢引き上げに加え、職業ごとに異なる年金制度の一元化など「構造的な問題」を是正する必要性を指摘した。