[東京 16日 ロイター] – 防衛力の増強を議論する政府の「防衛力強化に関する有識者会議(座長・佐々江賢一郎元外務次官)」は来週まとめる提言で、財源として法人税を含む幅広い税目の増税を提言する。 政府関係者が16日明らかにした。与党幹部によると21日に4回目の有識者会議が開催され、提言を岸田文雄首相に渡す予定。

提言を踏まえ与党税調が増税の実施時期を含め具体案を議論する。世界的な景気後退懸念が広がるなか政府与党内には増税に対して慎重論も多く、政府が防衛増強計画の裏付けとなる予算案を取りまとめる年末まで議論が長引くことも予想される。

政府は外交・安全保障の長期指針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を12月中旬にも改定する計画。有識者会議は、防衛費の増強には安定財源が不可欠と主張するメンバーが多く、提言では、防衛を受益する国民全般が負担すべきとして、法人税を含め幅広い税目の増税の検討の必要性が明記される見通し。

複数の政府・与党関係者によると、提言を受けて与党税調では法人税や所得税の増税の可能性が検討される方向。一方、有識者会議の提言では、与党内の議論の焦点の一つである今後の防衛費の増額規模は明記されないという。

15日公表された第3回有識者会議の議事要旨によると、民間委員の間では「防衛力強化の受益が広く国民全体に及ぶことを踏まえ、それに要する費用は、国民全体で広く負担する形を目指すべき」、「財源については、幅広く国民に負担してもらうため、個人所得税の引き上げも視野に入れる必要」などの意見が出た。

今後の政府・与党内の議論は、具体的な防衛費の金額と増税の規模、実施時期などに移る。「法人税、所得税ともに増税の実施は2024年度以降で、その間は国債発行が必要」(政府関係者)との意見も出ている。

防衛費の増強をめぐり、岸田首相は有識者会議で、防衛省の予算と空港や港湾などインフラ整備や研究開発など他省庁の予算を合算した「総合的な防衛体制の強化に資する経費」の創設を提唱している。

防衛省予算は現在、対国内総生産(GDP)で1%程度だが、21年度予算では、海上保安庁予算などを加えた北大西洋条約機構(NATO)基準の防衛関係費は、GDP比で1・24%となっている。

自民党は選挙公約で防衛費の対GDP比を5年以内に2%以上に上げると掲げているが、自民党保守派には、他省庁予算の組み入れは水増しとの批判もある。