[香港 17日 ロイター] – スイス金融大手UBSは16日、米証券取引委員会(SEC)に提出した投資家向けの文書で、同業クレディ・スイス(CS)の買収は「望ましくない」と判断していたが、世界的な銀行危機でCSの財務が悪化し、当局が速やかな対応を迫られていたため、救済買収を急いだと説明した。

「緊急事態」だったため、資産評価(デューデリジェンス)を4日以内に終えたことも明らかにした。

文書によると、スイス国立銀行(中央銀行)はCSの資金流出や株価急落を受けて、3月15日にCSに対する流動性支援を表明したが、UBSはその翌日にCSと秘密保持契約を締結してデューデリジェンスを開始。

中銀は3月19日、UBSが30億スイスフラン(34億ドル)でCSを買収し、事業縮小に伴い発生する損失を最大50億フラン引き受けると発表した。

買収価格は当初の10億フランから引き上げられたという。

文書によると、UBSの内部でCS買収に関する調査が始まったのは昨年10月。取締役会の特別戦略委員会がCSの経営状態を調査した。その時点でCSからは7─9月期を大幅に上回るペースで預金と純資産が流出していたという。

UBSの経営陣は昨年12月初旬、CS買収がもたらす帰結について予備的評価を実施。12月19日に戦略委員会に報告書を提出した。

戦略委員会と取締役会は今年2月、買収は「望ましくない」との結論をそれぞれ下し、CSの経営が悪化し規制当局がUBSに介入を要請した場合に備えるため、さらに分析を進めることを提言した。

UBSは1月から3月中旬にかけて財務分析を行い、当局から買収を提案された場合に生じる懸念事項やUBSへの悪影響に対処するため、潜在的な法的構造や対応策を検討した。

文書によると、昨年12月から今年1月中旬にかけては、CSの幹部もUBSとの合併を含む選択肢を政府と協議していた。