2018年6月12日、シンガポールで会談して共同声明に署名し、握手を交わす北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領(肩書きはいずれも同時)(AFP時事)
2018年6月12日、シンガポールで会談して共同声明に署名し、握手を交わす北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領(肩書きはいずれも同時)(AFP時事)

 【ソウル時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(現総書記)と米国のトランプ大統領(当時)がシンガポールで初の首脳会談を行ってから12日で5年となる。米朝はその後、合意した「朝鮮半島の非核化」の進め方を巡って対立、決裂した。北朝鮮が核・ミサイル開発にまい進する一方、バイデン米政権は中国への対応を外交の中心に据えており、近い将来の非核化は全く望めない状況だ。

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 「絶対に核を放棄できない」。昨年9月の最高人民会議(国会に相当)で、正恩氏はこう訴えた。先制使用も排除しない核兵器の使用条件を定めた法令を採択し、「核保有国の地位が不可逆的になった」と主張。「核保有国」として米国をはじめ国際社会と対峙(たいじ)していく意思を明確にしている。

 正恩、トランプ両氏は2018年6月12日、シンガポール南部セントーサ島のホテルで歴史的な初会談に臨み、朝鮮半島の完全な非核化などを盛り込んだ共同声明に署名した。

 しかし、19年2月のハノイでの再会談では一転、全ての核兵器の廃棄を迫った米国に対し、北朝鮮は制裁解除など「段階的な非核化」を要求し、対立。会談後の実務交渉は一歩も前進しなかった。

 正恩氏の威信を懸けた交渉が頓挫したショックは大きく、北朝鮮の姿勢は硬化。米国への対立姿勢を鮮明にし、21年1月の党大会では米国を「最大の主敵」と位置付けた。22年1月には米国との「信頼醸成措置」を全面的に見直し、凍結していた核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を再開させると表明。情勢はシンガポール会談以前の緊張局面に逆戻りした。

 ウクライナ侵攻や米中競争でロシア、中国と米国の対立が深まる中、国連安全保障理事会は、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対し、一致した対応を取れていない。

 「あらゆる外交的な取り組みが失敗してきた」。米国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官は今月6日、米シンクタンクの会合でこう語り、ハノイでの首脳会談以降、対話再開に向けた米側の働き掛けに北朝鮮が全く応じていない現状を嘆いた。

 北朝鮮はそもそも、新型コロナウイルス感染拡大で国境を閉鎖している。バイデン政権は無条件での対話を呼び掛けているが、米当局者は「北朝鮮が国境をいつ、どのように開放するか次第だ」と語った。