[ムンバイ 6日 トムソン・ロイター財団] – インド最高裁判所が今年4月、同性婚を法的に認めるかどうかの審理を開始すると、LGBTQプラス(性的少数者)のお見合いサービスを手がけているカマクシ・マダンさんの元には、LGBTQプラスの子どもの配偶者を探している親たちからの問い合わせが増加した。 多くのインド人にとって、同性愛を公然と語るのはタブーとみなされており、同性婚は非常に微妙な問題だが、人々の姿勢は変わりつつある。

2018年に結婚相談会社を設立したマダンさんは「何百人もの母親から電話がかかってきて、息子の『夫』を見つけてほしいと言われている」と明かした。

同性婚が合法化されれば、インドの結婚産業にとっては大きな追い風になるだろう。

インドの風習では結婚式には多額の費用がかけられ、何日も続く。金融会社リライアンス・マネーによると、インド人は生涯で稼ぐ富の実に2割を結婚関係の費用に充てており、業界の規模は1兆ルピー(120億ドル)に達する。

同国では、2018年に同性愛を犯罪とする規定が撤廃された。それ以来、同性愛者のカップルは非公式の婚姻関係を結び、家族や友人らを招いた私的な式において誓いを交わしている。

アジアでは台湾とネパールしか同性婚を認めていない。ネパールでは先月、最高裁が同性婚の届け出を認めるべきとの仮命令を出した。インドで認められればやっと3カ国目となる。

インド政府は同性婚を法的に認めることに反対の立場で、LGBTQプラスのカップルからの合法化要求を退けるよう最高裁に促している。

判決は年内に下される見通しだが、最高裁は具体的な期日をまだ発表していない。

現時点でも多くのインド人にとって、同性愛を公然と語るのはタブー(禁忌)とみなされており、同性婚は非常に微妙な問題だ。

それでも人々の姿勢は変わりつつある。ピュー・リサーチ・センターが6月に公表した調査では、インドの成人の53%は同性婚を合法化するべきだと答えた。イプソスが以前行った調査を見ると、同性婚賛成比率は2015年が29%、21年でも44%だった。

マダンさんも、まず親や家族が同性婚を受け入れている様子が見えると説明。「(保守的な)バックグラウンドを持つある父親から電話で『私の娘のためにどうか花嫁を探してくれ』と言われた」と述べた。

<膨大な潜在顧客>

同性カップルのために法的拘束力のない伝統的なヒンドゥー教の結婚式を司っているサンスクリット学者のサイラブ・ボンドレさんは、同性婚が合法化されると、訴訟やボイコットを恐れているヒンドゥー聖職者に安心感を与えられるとの見方を示した。

ボンドレさんは「多くのヒンドゥー聖職者は実際には同性の結婚式を執り行うことに反対ではない。(だが)それによって聖職者の世界でつまはじきに遭うのを怖がっている。同性婚を挙行すれば、異性婚に呼ばれなくなるかもしれず、そうなれば生活が成り立たなくなる」と話す。

一方、自身もLGBTQプラス社会の一員というボンドレさんによると、多くの同性カップルはインドの一般的な文化的風習に従って、伝統的で宗教色のある結婚式を行いたがっている。「われわれは、自分たちの親戚や友人(のカップル)が互いに愛を確認しているのを見ている。同じようにするのが私たちの夢だ」という。

LGBTQプラス向けの婚活アプリを開発したサミア・スレージェスさんは、最高裁が同性婚を巡る審理を始めたことで、インド全土のLGBTQプラスの間で、自身の性的なアイデンティティーをカミングアウトし、生涯寄り添う相手を探す動きが加速していると指摘。 4月18日の審理開始以降、このアプリの1日当たりダウンロード数が2倍になったと付け加えた。

スレージェスさんは、トムソン・ロイター財団に「毎日100人余りの新規登録がある。われわれは以前より広告費を減らしているのに」と語った。

このアプリは現在の登録メンバーが約2万人で、1日当たりのアクティブ利用者数は5000-6000人。会員料金として得られる利益は毎月数千ルピーと少額だが、スレージェスさんは今後の事業の大きな成長に期待している。

最高裁の判決が同性婚を認める内容になれば、何百万人もがメンバーになろうと待ち構えている、というのが同氏の見通しだ。

(Vidhi Doshi記者)