• 「最大限の政策のオプショナリティーを確保した」とエラリアン氏
  • 「市場は9月を待ち、1日の雇用統計からそれが始まる」との指摘も

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)での発言を受け、債券相場は彼の思惑通り、連邦準備制度の次のステップについて確信を欠く状態となった。

  それは将来のポジショニングが割れていることでも一目瞭然のシナリオであり、経済データの進展に応じて、世界最大の債券市場を動揺させる可能性を心配することなく、今後数カ月の間に政策を速やかに調整する自由度をパウエル議長と同僚らに与える。

  パウエル議長は25日の講演で、インフレ抑制のために必要なら追加の金融引き締めの用意があると語った。投資家にとっては、今週9月1日に発表される米雇用統計(8月)のような経済統計が極めて重要になり、米国債指数が4カ月連続の下落に向かう中でも、債券強気派と弱気派との闘いの勝者をすぐに認定することが難しくなる状況を意味している。

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  アリアンツの首席経済顧問で、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるモハメド・エラリアン氏は、ブルームバーグテレビジョンに対し、パウエル議長が「最大限の政策のオプショナリティーを確保した」との認識を示した。

  JPモルガン・アセット・マネジメントやTCWグループなど最大手の資産運用会社の一部は、連邦準備制度がこれまで続けてきた引き締めと米国の10年国債利回りの約0.5ポイントという6月以降の急上昇がリセッション(景気後退)の引き金となり、2024年の利下げは避けられないと予測する。

  これに対し、インフレが執拗(しつよう)だと分かり、米政府が国債の発行を増やしていることもあって、ヘッジファンドはショートポジションに傾く。ニューヨーク連銀の前総裁で、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストを務めるウィリアム・ダドリー氏は「1980年代初めに始まった債券の強気相場が終わった」のではないかと考えている。

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  ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「市場にとってデータが二の次という期間が続いたが、9月を待つということであり、それが1日の雇用統計から始まる」と指摘し、現時点ではインフレおよび賃金動向の方が「供給よりも長めの利回りの方向性に対する影響力が大きい」と分析した。

  パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のエコノミストのティファニー・ワイルディング氏は、 連邦準備制度がしばらく休止し、消費と景気に引き続き回復力がある場合には、その後24年に再び利上げする可能性も「考えられないことでない 」と顧客に先週警告した。

  一方、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、 アナ・ウォン氏によれば、「過去の利上げの長く、変わりやすいタイムラグが(BEがリセッション入りを予想する)年末にかけ景気に打撃を与えることになれば、中立金利が低いという主張が勢いを増しかねない」という。

原題:Powell Has Bond Traders Right Where He Wants Them: Full of Doubt(抜粋)