イラン戦争の停戦協議は一向に着地点が見えてこない。トランプ大統領とガリバフ国会議長の発言は、どんなに取り繕っても接点がない。一説によるとイランは「ホルムズ海峡の逆封鎖が解除されない限り協議には応じない」と、米国を強烈に牽制しているようだ。イランの主張にも一理あると思う。だがイランに、いや原理主義を奉じる宗教指導と己れの権力だけを信奉する革命防衛隊に、イラン国民を代表する権利はあるのだろうか。お互いの主張の善悪でも合理性や筋論でもない。国民の意思をどちらが代表しているかだろう。欠点だらけのトランプ氏の主張にも一貫性や、大義なるものはほとんど見えない。「合意しなければ橋や電力施設を全滅させる」。あるのは「力による平和の追求」だけだ。それでもイランは最後の最後に、パキスタンのイスラマバードに交渉団が姿を現すと見る。期待感を込めて停戦協議が再開されることを願っている。
イランの危機は米国とイララエル連合軍による戦争継続だけではない。イラン国民の生活が壊滅的に破壊されていることだ。戦禍での国民生活はどんな具合なのか、気になったので調べてみた。まず為替市場の動き。イランの通貨はイランリアルである。現状円との交換比率はどうなっているのか。Googleで検索した。結果は1円=8390.36イランリアルとなっている。1円が8390リアルということだ。これだと実感が沸かない。理解しやすい額に焼き直す。10円が8万3900円リアル、100円だと83万9000リアルになる。10個入りの卵は日本だと直近の平均小売価格が309円だ。これをイランで買うとすれば、259万2510リアル払うことになる。卵1個が約260万リアル。気が遠くなる。インフレ率は昨年12月から今年1月の消費者物価指数で見ると、前年同期比60%の上昇だ。おそらく戦争の影響で国民生活は物資不足に資金不足、イラン国民は戦後の日本のように「耐え難きを耐え、忍び難きを忍んでいる」のだろう。穏健派がいるとはいえイラン政府ならびに革命防衛隊は、国民から見れば生活者の敵であり文明の破壊者と映るだろう。
イランの危機は戦争だけではない。戦争より大きな危機は水不足ではないか。イランの歴史に詳しいわけではない。ネットで調べただけだが、これはもう危機というような生易しい状態ではない。歴史を否定し文明を破壊するほどの絶望的な状況が広がっている。トランプ氏は「文明が滅びる」と発言して顰蹙を買ったが、宗教指導者と革命防衛隊による現政権は、乾燥地帯に位置するイランの伝統的な生活の知恵とも言うべき「カナール」(地下用水路)を破壊しているのだ。トランプ氏より先に文明の破壊に手とつけていると見るべきだろう。現政権は「自分たちの権力を維持するために核とホルムズ海峡」を利用しているに過ぎない。戦争前に起こった強烈な反政府デモがそのことを如実に物語っている。宗教指導者と革命防衛隊は水不足を犠牲にして国民生活を破壊に導いている。イラン指導者よ、核濃縮やホルム部海峡の管理など国民無視の政策を即刻やめて、水対策に真剣に取り組むべきだ。西側の淡水化技術を活用し、国家の再建を模索すべきだ。パキスタンに行って米国と合意せよ。それがイラン国民を救う最善の道だろう。