• 今週開催のイベントで独自半導体「TPU」新世代を発表する見通し
  • 半導体設計で10年の経験、潤沢な資金力、AIモデルの知見が武器に
グーグルの次世代TPUチップを収めたチップトレー
グーグルの次世代TPUチップを収めたチップトレーPhotographer: Bryan Banducci/Bloomberg

Dina Bass

米アルファベット傘下グーグルの人工知能(AI)向け半導体が、テック業界で急速に存在感を高めている。競合勢を含め、有力AI開発企業はこぞってグーグルのAIチップ確保を急いでいる。

  同社は推論に特化した新たなチップの投入により、足元の勢いをさらに拡大したい考えだ。推論とは、学習済みのAIモデルを実行する工程を指す。グーグルはこれにより、市場のリーダーであるエヌビディアに一段と攻勢を強める。

  AIの応答速度を高める需要が高まる中、「チップを学習向け、あるいは推論用途向けにより特化させることが合理的になってきている」と、グーグルのチーフサイエンティスト、ジェフ・ディーン氏はインタビューで語った。AIの出力速度向上などを含め、「さまざまな取り組みを検討している」という。

  同社は今週、ラスベガスで開催される「グーグル・クラウド・ネクスト」会議で、独自設計の半導体「テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)」の新世代を発表する計画だ。

  グーグルのAIインフラと半導体事業を統括するアミン・バーダット氏は、AIの出力を高速化する推論向けチップの計画についてはコメントを避けたが、「比較的近い将来」に詳細が明らかになる可能性が高いと述べた。

グーグルのアミン・バーダット氏Photographer: Bryan Banducci/Bloomberg

  エヌビディアのグラフィックス処理装置(GPU)は、特に高度なモデルの学習において、AI分野の標準的存在であり続けている。ただ、推論用途では新興企業を中心に競争が激化しており、チャットボットやAIエージェントの応答時間を短縮するチップなどで、「エヌビディア一強」の構図に挑む動きが広がっている。

  エヌビディアは先月、AI新興企業グロック(Groq)から取得した技術を基に、推論の高速化を目的とした半導体の販売を開始した。これは200億ドル(約3兆1800億円)規模と報じられたライセンス契約の一環だ。

  競争が激しさを増す環境下で、グーグルは独自の強みを持つ。半導体設計で10年に及ぶ経験に加え、検索事業の収益に支えられた潤沢な資金力、さらにAIモデルに関する直接的な知見を備える。

  主要なAI開発企業の中で、規模に半導体を内製しているのはグーグルのみだ。そのため、チーム間で重要なフィードバックを共有し、ハードウエアの最適化を進めることができる。OpenAIはようやく独自チップの設計に着手した段階だ。

  エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は最近のポッドキャスト番組で、自社製品は数多くの用途に対応できるとして優位性を強調。「TPUでは実現できないこともある」などと述べた。

  一方、グーグルは自社の取り組みでTPUとGPUを併用している。グーグル・ディープマインドのデミス・ハサビスCEOはブルームバーグの取材に対し、「多くの人が両方での運用を望んでいる」と語った。主要なAI研究機関では、特にTPUへの関心が高まっているという。

  グーグルはこれまでも自社チップの推論性能を強調してきた。同社は当初、学習用と推論用でチップを分けることも検討していたが、これまでのところ採用していない。ただ、AI投資の中心が学習から推論へと移る中で、この方針が変わる可能性もあるという。

  ガートナーのアナリスト、チラグ・デカテ氏は「主戦場は推論へと移りつつある」と指摘する。自身の経験ではグーグルのジェミニ(Gemini)モデルは複雑な推論タスクへの応答が最も速いとした上で、「その主戦場において、グーグルはインフラ面で優位に立つ」と述べた。

グーグルの最新TPUチップをテストするラックPhotographer: Bryan Banducci/Bloomberg
グーグルの最新TPUチップPhotographer: Bryan Banducci/Bloomberg
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原題:Google Bets On New Chips to Boost AI Results, Challenging Nvidia(抜粋)