イラン停戦協議の出口が見えなくなっている。先週末に予定されていたパキスタンでの2回目の協議が流れた。これでイラン戦争の出口はまったく見えなくなった。こうした中ドイツのメルツ首相は昨日講演し、「トランプ米大統領はイラン戦争終結に向けた交渉で苦戦しており、イラン指導部から『屈辱』を受けている」と痛烈に批判した。この発言、険悪になっている米国とEUの関係をさらに悪化させそうな気がする。とはいえ、リベラル派の多い世界の主要メディをはじめ、トランプ氏の常軌を逸した発言を嫌う政治指導者の多くに共通する発想のようにも思える。こうした発言はフィーリング的には同意できる。ただ、複雑に絡み合う現実の国際政治の中では、ものごとの一面しか見ていないない気もするのだ。少し問題を整理してみたい。出口が見えなくなった原因の1つは、イランのアラグチ外相の発言にある。
アラグチ外相は17日に合意したイスラエルとレバノンの、10日間にわたる停戦合意を受けて次のように発言した。「停戦期間中、ホルムズ海峡を通過するすべての船舶に対し、航行を完全に開放する」と。この発言で世界中の期待感が高まった。株式市場は急騰し、ドルは各国の通貨に対して下落した。トランプ大統領も「ありがとう」と率直に感謝の意を表明している。ただ、「ホルムズ海峡の封鎖は続ける」と付け加えた。こうした中で革命防衛隊は(IRGC)は翌18日、「米国の封鎖が続く限り海峡は閉鎖される」と、強い口調でアラグチ外相の発言を否定したのだ。これはイラン政権内部で起こった亀裂である。これを機に「イランは誰が統治しているかわからない」(トランプ氏)と、政権内部の対立が浮き彫りになった。この事件を契機に一部ではIRGCによるクーデター説も取り沙汰されている。強硬派が穏健派を排除して完全に権力を掌握したという説だ。この事件に絡んで革命防衛隊出身のガリバフ国会議長とペゼシュキヤーン大統領の逮捕説まで流布されている。
問題は革命防衛隊の最高司令官に就任したヴァヒディ氏の経歴だ。この人物、対米最強硬派であることは間違いないが、専門家によると「単なる軍人ではなく、イランの軍事・情報・政治のすべてを熟知した現体制の重鎮」のようだ。経歴を見ると1994年のアルゼンチン・ユダヤ人文化センター爆破事件に関与したとして、インターポール(国際刑事警察機構)から国際手配されている。Geminiによると「この経歴が彼を欧米との妥協を一切許さない最強硬派へと向かわせてる」とある。先週末アラグチ外相はパキスタン、オマーン、ロシアを駆け巡っている。このほかサウジアラビア、クウェート、UAEなど各国首脳と電話会談も行なっている。プーチンとの首脳会談では「両国のパートナーシップ強化」といった気の抜けるような会談内容が公表されている。アラグチ外相の外遊は何を目指していたのか。慶大教授の田中浩一郎氏は「イランは仲介国のパキスタンに何らなの不満を抱いている。パキスタンに代わる仲介国を探しているのではないか」(NHKニュース)とコメント。個人的にはアラグチ氏はヴァヒディ氏に操られているように見えるのだが・・・。