4月22日に開催された日本成長戦略会議の資料を読んでみた。同会議のHPによると、この日のテーマは「分野横断的課題への対応」とある。高市政権が進める「責任ある積極財」の推進役であるクレディ・アグリコル証券のチーフエコノミスト・会田卓氏をはじめ複数の資料が添付されている。政府が提出した資料には「危機管理投資」・「成長投資」をはじめとする投資の拡大に向けてボトルネックを解消するため、市場・技術・需要・政策等の不確実性の緩和、地政学リスクの高まりやサプライチェーンリスクの顕在化に対応した経済安全保障の確保、産業用地をはじめとするインフラ不足などへの対応が不可欠。これらに対応して、投資収益に値する企業の予見可能性を高めて投資を引き出していく、総合的な政策を講じる必要」。こうした点について議論してほしいというテーマ設定になっていう。メンバーの中で気になったのは連合の吉野友子会長の資料だ。
同氏は成長戦略の基本的考え方について以下のように指摘する。「国内投資を最大限強化し、将来を展望し社会のニーズに対応できる産業基盤を確立することは、重要である。そのためには、資金、技術、情報に加えて『人への投資』が不可欠である。過去 30 年にわたり、株主配当や内部留保に比べて『人への投資』が抑制されてきたが、変化の兆しもある。政府としても、コーポレートガバナンスのあり方に働きかけ、『人への投資』を加速させていくべきである」。もう一点強調しているのは適切な分配だ。「経済成長を国民生活の向上と社会の安定に結び付けていくことを明記すべきである。『強い経済』の好循環には、生産活動で生み出された付加価値が、適切に分配され、国民のくらしの向上へ循環することが必要である。日銀の調査によると、1年前と比べて暮らしにゆとりが出てきたと感じる国民は引き続き少数である。多くの国民は、いまの暮らしや将来に
対して大きな不安を抱いており、不安を安心と希望に変える、ひとり一人の心に届くわかりやすいメッセージを盛り込む必要がある」と。
連合会長は労働者代表として高市政権に真っ向から敵対するのかと思っていた。この文章を読む限り、高市氏と吉野氏は同床異夢とは反対の異榻同夢(いとうどうむ)ではないかとすら感じた。もっとわかりやすくいえば労使と立場は異なるが、みている夢は一緒だということだ。もちろん労働市場改革や夫婦別姓論などでは交わることがないほど見解の相違はある。だが、積極財政論という点では交わらないほどの距離はない。富士山の登り口は吉田口や須走口、御殿場口とある。どこから登るかの違いはあるが、目指すべき頂点は一緒なのだ。国民を豊かにするという頂点論では両者とも一致している。今朝のニュースによると、高市総理が29日連合のメーデー中央大会に出席したとある。読売新聞は吉野会長が「首相が意欲を示す裁量労働制の見直し」に釘を刺し、選択的夫婦別姓を巡って異論を唱えたと対決姿勢を煽っている。おそらくそうではないだろう。立場の違いはあるものの、歩み寄る余地はかなりある。メディアの報道は焦点がボケている。