高市早苗総理と韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領による日韓首脳会談が昨日、大統領の故郷である安東(アンドン)市で開催された。中東情勢の緊迫化や、直前に行われた米中首脳会談(5月14〜15日)など激変する国際情勢を受け、今回の会談では「エネルギー」「防衛」「通商」の3つの分野で大きな成果や合意が確認された。かつて文在寅(ムン・ジェイン)政権下で、韓国海軍艦艇による自衛隊機への火器管制レーザー照射事案が発生するなど、一触即発ともいうべき険悪な時代があったことを思えば、現在の両国関係は飛躍的に改善されたと言える。今回の会談でも、高市首相が主導するエネルギー分野での協力関係の強化など、従来にない緊密な連携が確認された。日韓関係の安定は2国間にとどまらず、東南アジアを含む地域全体の安定に寄与する。とはいえ、この良好な関係がいつまで続くか、一抹の不安がないわけではない。
首脳会談の成果を振り返る。第一は「エネルギー」での合意だ。万が一の供給危機に備え、日韓で石油製品を相互に融通し合う枠組みで協力することで一致した。高市首相がアジアの原油確保のために打ち出した総額約100億ドルの金融支援枠組みに韓国も加わっており、地域全体のエネルギー供給安定化に向けて協調していく。第二は「防衛・安全保障協力」の緊密化だ。緊迫する北朝鮮情勢やインド太平洋地域の安定に向け、日韓、そして日米韓3カ国の安全保障協力をさらに高い次元へ引き上げることで一致。高市首相は会談で「両国がインド太平洋地域の安定化の要として役割を果たしていくことが極めて重要だ」と強調した。第三が「産業・通商政策対話」の新設である。エネルギーや防衛といった戦略的協力を一過性のものにせず、具体化・継続させるための実務プラットフォームとして、両政府高官による同対話の創設が共同文書に盛り込まれた。過去の対立の歴史から見れば、現在の日韓関係はまさに「未来志向」の体現と言っていいだろう。
今回の首脳会談は、単なる友好ムードの演出にとどまらず、緊迫する世界情勢を前に、日韓が実利を追求する形で防衛・エネルギー・通商の協力強化を打ち出した点に意味がある。これは一種の同盟関係に近い緊密さをも感じさせる。現在、日本はオーストラリアをはじめ、フィリピンやインドネシア、インドなどインド太平洋地域の主要国との関係を強化している。これは安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の具体化にほかならない。米国でトランプ大統領が掲げる「ドンロー主義」の思惑と重なるかは未知数だが、日本には外交においてFOIPという明確な理念を掲げている強みがある。国内で憲法改正への動きが進む中、FOIPの推進は現行憲法前文にある「日本国民は、(略)諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し」という精神に合致する。戦争放棄を理念とする平和憲法の精神をこうした国際協力の形で深化させることによって、新しい未来が開けるのではないか。今回の会談からは、そんな可能性が感じられた。