「インテリジェンス(情報活動)機能の強化に関する有識者会議」の初会合が昨日、官邸で開かれた。出席した高市首相は、「国民の安全や国益をしっかりと守り抜いていく。そのためには情報力の強化が不可欠だ」と強調し、「国家情報戦略」を初めて策定する考えを表明した。同会議は来年1月にも、同戦略の中長期的な指針となる「戦略に関する見解」をまとめる予定だ。

日本にとって、インテリジェンスの強化は古くて新しい課題である。歴代内閣がこれまで本格的に手をつけてこなかったこと自体、政治責任の回避と批判されても仕方がないだろう。保守系の高市内閣は、日本維新の会との連立協議の中にも、この項目を盛り込んでいる。昨今、日本に対する外国勢力による選挙干渉や、特定候補の当落を意識した情報活動が活発化している。

政府が初会合に提出した資料には、「不当な工作のリスク」として、次のような具体的事例が紹介されている。

①ロシアの情報機関員とみられる在日通商代表部員が、我が国の工作機械関連会社の従業員に金銭を提供するなどして働きかけ、同社の営業秘密を不正に取得したとして、警視庁が検挙。

②北朝鮮のIT労働者が、情報窃取などの悪意あるサイバー活動に関与している可能性。

③第51回衆議院議員総選挙に際して、SNS上で多数のアカウント群が我が国政府の政策などを批判する内容を投稿・拡散していたと報じられたほか、政府も、外国のものと疑われる不審なアカウントが同選挙に関する内容を投稿している事例を一定数把握している。

要するに、日本という国は、外国勢力による情報侵略に無防備なのだ。今や世界の現実は、日々が「情報戦争」でもある。先ごろ高市首相が国連で行った一般討論演説で、「旧敵国条項」の削除に言及した。これも広い意味では、国際的な情報戦・外交戦の一環と見ることができる。

これは、中国の情報戦に対する巧妙な反撃でもある。中国はかつて、国連憲章に残る旧敵国条項の削除に賛成票を投じている。その中国が、昨年の高市首相の国会答弁を境に、「旧敵国条項は国連憲章の条文として今でも存在している」との立場を示すようになった。これを黙認するようでは、日々繰り返される情報戦に対抗できるわけがない。

とはいえ、インテリジェンスの強化には一定の歯止めも必要だ。情報収集の強化が、国民のプライバシーや基本的人権を不当に侵害することがあってはならない。その点も含めて、有識者会議がどのようなインテリジェンス戦略・指針を作成するのか。今後の推移を見守りたい。