海外事件簿

米南部テネシー州で死刑の執行に失敗する事態が起き、死刑制度を巡る議論に一石を投じている。死刑囚の女が致死量の薬物注射を受けたにもかかわらず死に至らなかったもので、史上初のケースとみられる。なぜ失敗したのか。人道的な観点から同州へ批判の声も上がり、死刑制度のあり方が改めて問われそうだ。
特別な免疫をもっていたわけではない
「これまで見た中で最悪の失敗で、現代で起きたどの失敗とも異なる」。米国の死刑に関するデータを調査する非営利団体「死刑情報センター(DPIC)」はこう指摘する。生き延びたのは、クリスタ・パイク死刑囚(50)。パイク死刑囚は18歳だった1995年に、当時の恋人らとともに女性を殺害したとして死刑判決を受けていた。
米国では、州と連邦政府、軍にそれぞれ刑罰制度がある。事件の内容によって、州法か連邦法で訴追され、州法で死刑判決を受けると、その州のやり方で執行される。昨年1年間では、11州で47の死刑が執行され、8割以上が薬物注射だった。連邦政府での執行はなかった。50州のうち、23州では死刑制度が廃止されている。

DPICによると、パイク死刑囚は9月30日に致死量の薬物「ペントバルビタール」を2回投与されたが、呼吸が続いていた。意識不明の状態のまま近くの病院に搬送され、10月6日に意識を取り戻したという。翌7日に弁護団は会見を開き、「回復は長い道のりになるだろう」と述べた。10日に退院し、刑務所に戻った。
英BBC放送は医師の話として、失敗は「(パイク死刑囚が)特別な免疫を持っていたからではなく、致死量のペントバルビタールが血液に到達しなかった」からだとの見方を伝えた。十分な量の薬物が血管に入らず、皮膚の下の組織に広がった可能性が高いという。