
[東京 4日 ロイター] – 官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)が、2年前に買収した半導体材料大手JSR(東京都港区)を三井化学(4183.T)、新しいタブで開きますに売却することが分かった。月内にも決定する見通しで、売却規模は1.3兆円以上になる可能性がある。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
政府が出資するJICは、世界的に競争力がありながら各企業の規模が小さい半導体材料業界の再編を目指してJSRを約9000億円で買収した。当初はJSRを中核に他社の買収などを進める構想だったが、JSR自体を国内化学大手に売却することで再編を図る。AI(人工知能)ブームで半導体関連企業への評価が高まる中、海外ファンドなどではなく国内企業への売却を通じ、政府が進める日本の半導体産業の競争力強化につなげる。
JICと三井化学、JSRにそれぞれコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。
JSRは半導体の製造工程で使われる主要材料「フォトレジスト」の大手メーカー。三井化学は半導体関連材料事業の拡大を進めており、JSRの買収によって同事業を大幅に強化する。
1.3兆円以上の買収額は、三井化学の時価総額約8000億円を大きく上回る。実現すれば、買収額が買い手の時価総額を大きく上回る異例の大型案件となる。化学業界では、2020年の旧昭和電工(現レゾナック・ホールディングス(4004.T)、新しいタブで開きます)による日立化成買収を上回る過去最大級の再編となる可能性がある。
三井化学が買収資金をどう手当てするかは現時点で分かっていない。同社の手元資金は26年6月末で2178億円、有利子負債は8764億円で、財務の健全性を示す負債資本倍率(ネットDEレシオ)は0.75倍。同社はDEレシオの目標値を0.8倍以下に設定している。
JSRは非公開化に際し、海外大手に比べ規模で見劣りする日本の半導体材料メーカーの競争力強化を課題に挙げていた。非上場化によって戦略的なM&Aを機動的に進め、JICと連携して業界再編を主導する方針を示していた。
足元では半導体関連株が調整局面にあるものの、生成AI向けのデータセンター投資は高水準が続いている。中長期的には半導体供給網を支える材料メーカーの成長余地は大きいとの見方が根強く、関連事業を強化する動きが続いている。
JICは18年に設立された経済産業省所管の官民ファンド。産業競争力強化法に基づき、オープンイノベーションの促進や産業競争力の強化を目的に投資している。
ロイターは5月、JICがJSRの売却を検討していると報じていた。富士フイルムホールディングス(4901.T)、新しいタブで開きますや三菱ケミカルグループ(4188.T)、新しいタブで開きますも買収に関心を示していた。
(浦中美穂、Sam Nussey 編集:久保信博)