Joseph Ax, Jason Lange, Brad Heath

[ワシントン 4日 ロイター] – 3日投開票の米中間選挙で、民主党が上下両院の過半数を奪還した。共和党の牙城にも食い込んで幅広い勝利を収め、有権者がトランプ大統領に厳しい審判を下した形となった。

2024年の大統領選でトランプ氏の2期目への返り咲きを後押しした保守層が、民主党へと大きく傾いた。不人気な対イラン戦争への強い不満や生活費高騰への不安、トランプ氏の政権運営に対する怒りが背景にある。サウスカロライナ、テキサス、アイオワといった保守地盤を含め、長らく勝利は困難と​考えられていた州も制した。

カンザス州の上院選では、牧師アダム・ハミルトン氏が約1世紀前の大恐慌期以来初めて、民主党候補として議席を獲得した。

オハイオ州では、民主党のシェロッド・ブラウン氏が、2024年にはバンス副大統領が保‌持していた上院議席を奪取した。テキサス州では、民主党のジェームズ・タラリコ州下院議員が共和党のケン・パクストン州司法長官を破った。オハイオ、テキサス両州では、24年の大統領選でトランプ氏が得票率で2桁の差をつけて勝利していた。 もっと見る

トランプ氏が24年に18ポイント近い差で勝ったサウスカロライナ州では、小児科医のアニー・アンドリューズ氏が、共和党のダーリーン・グラム上院議員を破った。グラム氏は、兄のリンゼー・グラム上院議員の死去に伴い、後任に任命されていた。

トランプ氏は、パクストン、グラム両氏に明らかな弱点があるにもかかわらず、より実績のある候補者よりも優先して両氏を推した。パクストン氏は23年の弾劾や証券​詐欺罪での起訴など数々の問題を抱え、グラム氏は自ら認めた経験不足が批判的に報じられていた。

トランプ氏は選挙戦終盤、24回を超える集会を開くなど精力的に遊説し、パクストン、グラム両氏とオハイオ州のジョン・ハステッド上院議員を重点的に応援。支​持者らに「私が立候補しているつもりで投票してほしい」と繰り返し呼びかけた。

3日夜に共和党が上下両院の過半数を失う恐れが明らかになると、トランプ氏は交流サイト(SNS)に「私は立候補してい⁠なかった。もし立候補していたら、われわれは圧勝していただろう!」と投稿した。

<民主党の波>

下院でも民主党は、ケンタッキー、ニュージャージー、ノースカロライナなどの州で共和党から議席を奪い、保守色の強い選挙区でも健闘、過半数を獲得する見通しとなった。接戦​になるとみられていた選挙区のうち、これまでに決着した20区全てを制した。共和党が複数の選挙区を自党に有利になるよう区割りするという異例の戦略は、おおむね不発に終わった。民主党は共和党から標的とされた議席の大半を守った。

民主党の優勢は他の選挙にも及んだ。テキサス州​では3期目の現職、グレッグ・アボット知事が民主党のジーナ・イノホサ氏に敗れた。保守地盤のアイオワ、オハイオ両州でも民主党が知事選を制した。 もっと見る

今回の結果により、大統領と議会の多数派が異なる「分割政府(Divided government)」の時代に入る。共和党が上下両院を支配した過去2年間、議会が権限を行使してトランプ氏を抑制することはほとんどなかった。

民主党は27年1月の新議会発足後、権限を行使してトランプ政権や同氏の家族、側近らを調査し、重要法案で譲歩を求めるとみられる。民主党が多数派を握る上院は、最高裁判事に欠員が出た場合の後任候補を含め、トランプ氏が指名する人事の承認を阻止できる。

民主党のシューマー上院院内総務は「米国​民は変化を求めて投票した。今度は民主党がそれに応えなければならない」と語った。

米憲法により3期目を目指すことが禁じられているトランプ氏は、過去10年の大半にわたり共和党を強く掌握してきた。しかし、新たな勢力均衡によって、レームダック化が加速する可能性がある。​

関心が28年の大統領選に移り、後継候補らが「トランプ後」の政治的影響力を競い始めるためだ。

民主党内には、トランプ氏が20年と同様に選挙結果を覆そうとするのではないかとの懸念があった。しかしFOXニュースのインタビューで同氏は結果を受け入れ、民主党に祝意を示した。移民などの問題で民主党と‌協力するとも述べ⁠たが、同党が「とんでもない」法案を可決すれば拒否権を行使するとけん制した。 もっと見る

<トランプ氏に厳しい審判>

中間選挙は通常、現職大統領への信任投票と見なされるが、トランプ氏も有権者のそうした見方をほとんど否定しなかった。選挙戦終盤の数週間には多くの集会を開き、支持者らに「私が立候補しているつもりで投票してほしい」と繰り返し呼びかけた。

トランプ氏はまた、複数の選挙戦に介入し、自身が推す候補の擁立を確実にした。共和党内には、同氏が選んだ候補には大きな弱点があるとの懸念もあった。

テキサス州では、現職のジョン・コーニン上院議員ではなく、不祥事を抱えたケン・パクストン州司法長官を支持。サウスカロライナ州では、リンゼー・グラム上院議員が26年に急死した後、その妹で政治経験のないダーリーン・グラム氏を後継候補に選んだ。両候補とも敗れた。

しかし、トランプ氏と距離を置こうとした候補も、有権者​の怒りから逃れることはできなかった。メーン州では共和党現職の​スーザン・コリンズ氏が、選挙戦で大統領と異なる立場を⁠取る姿勢を強調したにもかかわらず、30年にわたる上院議員としての歩みに終止符を打つころになった。 もっと見る

ミシガン州では、現職が出馬しない上院選で、民主党進歩派のアブドゥル・エルサイド氏が、トランプ氏の支持を受けたマイク・ロジャーズ氏を破った。ロジャーズ氏は選挙戦で、エジプト系のエルサイド氏をイスラム過激派と関連があるかのような主張を展開していた。エルサイード氏は3日夜、支持者を前に、​ロジャーズ氏を念頭に「あなたは憎しみを選び、ミシガンは希望を選んだ」と語った。

ジョージア州で当選確実となった民主党現職のジョン・オソフ上院議員は、勝利を祝う集会で支持者に「米国民​は広範かつ決定的な勝利を通じて、⁠ドナルド・J・トランプ大統領という人物の堕落、腐敗、無能さに厳しい審判を下した」と語った。

フロリダ州では共和党のアシュリー・ムーディ上院議員が民主党のアンジー・ニクソン氏を退けた。ただ、ロイターとUSAトゥデーがまとめた開票集計によると、得票率の差は約3ポイントにとどまった。同州では24年にトランプ氏が13ポイント差で勝っており、共和党の強固な地盤でさえ民主党に大きく傾いていることを改めて示し民主党は、フロリダ州の共和党議員らが26年に区割りを変更した下院の3選挙区でも議席を守った。いずれも24年の大統領選では、トランプ氏が9ポイント以上の差で勝った選挙区だった。

主要テレビ局やAP通⁠信など米メディア​の連合体の委託で調査会社SSRSが実施した出口調査によると、全米の有権者の半数が26年の中間選挙を大統領に厳しい審判を下す機会だと捉えていた。また、約75%が国の進む方向​に「怒り」または「不満」を感じていると答えた。さらに、回答者の70%が議会に大統領への監視・抑制機能を一段と強めることを求めた。

接戦となったミシシッピ州とアラスカ州の上院選は、4日未明の時点で勝敗が判明していない。

今回の選挙では、両党で歴史的な「初」が相次いだ。ジョージア州では民主党のケイシャ・ランス・ボトムズ氏が、​全米初の黒人女性知事に当選。フロリダ州ではバイロン・ドナルズ氏が知事選を制し、共和党で米国初の黒人知事となった。民主党のジーナ・イノホサ氏はテキサス州初の中南米系女性知事に、同党のハビエル・ベセラ氏はカリフォルニア州初のヒスパニック系知事となる。