寝て起きたら世界が変わっていた。今朝はそんな印象だった。ロイターによると「米政府は29日、500億ドル相当の中国からの輸入品に関税をかける方針は変えていないとし、中国が知的財産権に関する問題に対応しなければ導入する可能性があるとの姿勢を示した」と報じた。あれ、つい先日、中国の副首相が訪米してムニューシン米財務長官らと通商協議をしたばかりじゃなかったの。その結果ムニューシン財務長官は、米中貿易戦争をいったん「保留」にすると述べていたはずだ。それがどうしていまごろ「輸入品に関税をかける方針は変えていない」なんて言い出したのだろう。そうか、なるほど。トランプ大統領の手の内が少し読めるようになってきた気がする。

米朝首脳会談をトランプ大統領は一端中止すると発表した。この発言が北朝鮮の“本音”を引き出した。意図的か単なる偶然かわからないが、北朝鮮は米朝首脳会談に活路を見出す以外に道がないことが、あの中止発言で抉り出された。北朝鮮は強気に出ることによって米国の譲歩を迫ろうとしたのだろうが、「トランプの一撃」によってこれが裏目に出た。おそらくトランプ大統領はこれに味を占めたのだろう。今度は中国に“関税を課す”との脅しをかけた。これに中国が簡単に乗るとは思えない。なんだかんだと抵抗するだろう。中国は北朝鮮ほど柔ではない。金正恩委員長に通じたことでも習近平主席には通じないだろう。とすれば通商問題のリスクは以前よりも大きくなった。マーケットはこれにすかさず反応した。

打開策はあるのか。ロス米商務長官が6月2-4日に訪中し、3回目の通商協議を北京で行う。ブルーンバーグは「同協議の重要性は高まることとなった」としている。これが落としどころか。今回の常軌を逸したような米国側の対応は訪中するロス商務長官に対する援護射撃か。それにしても公開で通商交渉のディールを行うトランプ大統領のやり方に一抹の不安を覚える。というか、同じ柳の下に二匹目のドジョウがいるのだろうか。おそらくコトはそんなに単純ではないと思う。トランプ大統領はあれやこれや、秤にかけながらディールしているのだろう。そんなことをしているうちにイタリアの政局が不安になり、ウクライナではプーチン大統領に批判的なロシアのジャーナリストが射殺された。世界はただでさえ不穏な空気に包まれている。“公開”ディールはリスクが大きすぎる。