[ブリュッセル 21日 ロイター] – 米国のマティス国防長官が来年2月末に退任すると発表したことを受け、マティス氏の退任表明そのものに加え、同氏の退任につながったトランプ米大統領の政策に対し米国の主要同盟国から懸念の声が上がっている。 

マティス国防長官は20日、退任を表明。前日にはトランプ大統領が側近の反対を押し切ってシリアからの米軍撤退を表明しており、外交政策を巡る大統領との見解の相違が背景にあるとみられている。

北大西洋条約機構(NATO)オアナ・ルンゲスク報道官は、「マティス長官はNATOの力を維持し、NATOが直面する安全保障上の大きな課題に対応する用意を整える上で大きく貢献した」とし、「マティス氏は軍人、および外交官として多方面から尊敬されている」と述べた。 

トランプ大統領が欧州の同盟国に対し防衛費を引き上げなければ米国はNATOへの支援をやめるとの姿勢を示しているのに対し、マティス氏はNATOの軍事的な同盟を重視。ルンゲスク報道官は「NATOは米国の揺ぎないコミットメントに感謝している」と述べた。 

欧州議会でリベラル派を率いるフェルホフスタット議員(元ベルギー首相)は「マティス氏はトランプ大統領の最も悪い性質を押さえ込み、NATO、および多国間主義を力強く支持していた。同氏の退任はロシアのプーチン大統領の計画が実現しつつあるかのようだ」とし、マティス氏の退任を受け、独自の防衛力を高めることが欧州連合(EU)の急務となっているとの考えを示した。 

フランスのパルリ国防相はトランプ大統領がシリアからの撤収を決めたことについて、過激派組織「イスラム国(IS)」は敗北したとのトランプ大統領の考えは「極めて深刻」であるとし、「イスラム国が根絶されたとの分析について、フランスは見解をまったく共有していない。極めて懸念すべき決定で、まだ行うべきことは残っている」と述べた。 

このほか、ドイツのフォンデアライエン国防相は「米国は世界的な安全保障で大きな役割と責任を負っているため、(マティス氏の)後任、および将来的な方向性について迅速に明確に説明することが重要となる」と述べている。