IT・ネット

AI=人工知能が天体観測の常識を変えるかもしれません。

夜空を特殊な望遠鏡でくまなく撮影し、その膨大なデータをAIが解析することで未知の天体をいち早く見つけ出す世界初の観測装置を東京大学などの研究チームが開発し、10月から観測を始めることになりました。

東京大学などの研究チームが開発したこの観測システムは、天体望遠鏡に84枚の高性能な動画センサーを取り付けたもので、天文台がある長野県木曽町にゆかりの女武将にちなんで「トモエゴゼン」と名付けられました。

観測システムは6秒ごとに少しずつ望遠鏡の向きを変えながら、2時間かけて夜空全体を動画で撮影し、AI=人工知能を使ってわずかな光の変化や星の位置のずれなどの異変をリアルタイムで見つけ出します。

一晩に撮影される動画はデータ量にして30テラバイト、映画にすると1万本分にものぼるということで、AIを活用することではじめてこれだけ膨大なデータを短時間で解析できるようになったということです。

研究チームによりますと夜空を動画で網羅的に観測するのは世界初の取り組みだということでこの観測システムを使って
星が突然、明るく輝く「超新星」を年間1000個程度、
未知の小惑星を年間100個程度、見つけ出すことを目指すとしています。

チームのリーダーを務める東京大学の酒向重行 助教は、「人類が見たことのない、細かな宇宙の変化を捉え、新たな発見につなげたい」と話しています。

すでに超新星を発見

星が大爆発を起こして明るく輝き始める超新星や、未発見のすい星、小惑星などの新しい天体はいつ、どこに現れるか分かりません。

新しい天体を効率よく見つけるためには、なるべく広い範囲を頻繁に観測し、星の光に変化がないか調べる必要がありますが、範囲を広げるほど星の数は増え、人の手で調べるのは難しくなってしまいます。

今回、開発された「トモエゴゼン」は一晩で1億個の星を動画で撮影します。その膨大なデータを解析するのはAI=人工知能です。

「トモエゴゼン」のAIはわずか10分ほどで画像を解析し、特殊な動きをする天体や突然現れた天体などを検出できるということです。

中には、大気のゆらぎや電気信号のノイズなど天文現象と紛らわしいデータも少なくありませんが、研究チームではあらかじめAIにこうしたデータを学習させることで、自動的に除去できるようになったということです。

結果は東京 三鷹市にある研究室にリアルタイムで送られ、新しい天体の可能性が高そうな順にスコアの形で表示されます。

これまでの試験的な観測で、すでに、しし座の方向に現れた超新星を1つ発見したほか、制御不能になってしまった日本のX線観測衛星「ひとみ」の姿を捉えることにも成功しています。

チームのリーダーを務める東京大学の酒向重行 助教は「AIを使うことで大量のデータを価値のあるものにすることができる。ビッグデータの手法を天文学に応用することで、人間の想像を超えた発見ができると期待している」と話しています。