自民党の成長戦略本部は昨日、積極財政に向けた提言を取りまとめ、高市早苗総理に提出した。この本部の本部長を務めるのは岸田文元総理。財政健全化を重視する慎重派と、積極財政派の間で調整を重ねてきた。その本部が取りまとめた提言には、危機管理投資や成長投資の財源として「つなぎ国債」の発行案が盛り込まれている。

財政を取り巻く現状の財源対策としては、これが現実的な選択肢なのだろう。成長投資の総額がどのくらいになるのか、現時点では見通せない。総理のブレーンの1人であるエコノミストの会田卓司氏は、独自の試算として30兆円程度の投資枠を提案している。これがそのまま実現するわけではないが、投資枠としてかなりの巨額になることは間違いない。

これを複数年度に分割して予算計上するため、トータルの予算規模は非常に大きくなる。年限についても3年から10年と幅があり、慎重派はより短期間を、積極派はより長期間を主張している。7月第1週にまとまる予定の「骨太の方針」まで、この議論は続くだろう。

論点や決断すべき項目は山ほどあるが、今回はこの「つなぎ国債」に焦点を当ててみる。償還(返済)財源をあらかじめ法律で担保して発行する国債のことを、俗に「つなぎ国債」と呼ぶ。過去の事例を見ると、1991年の湾岸戦争の際、多国籍軍への資金支援(130億ドル)を行うために「臨時特別公債(つなぎ国債)」が発行された。この時は償還財源として、法人税と石油税の臨時増税(2年間限定)がセットにされていた。

また、2025年には「こども未来戦略」の財源として「こども特例公債」が、気候変動対策では「GX経済移行債(GX国債)」が発行されている。後者は「化石燃料賦課金」や「特定事業者負担金」などのカーボンプライシング収入を返済財源としている。

では、今回の成長投資のために発行される「つなぎ国債」の担保財源は何になるのだろうか。経済成長に伴う税収増を財源とする以外に方法はないように思えるが、これもこれからの議論だ。しかし、個人的には問題の本質はそこではないと感じている。今こそ国債の管理政策を抜本的に変更する必要があるのではないか。

日本の国債には「建設国債」と「赤字国債(特例国債)」の2種類がある。建設国債は財政法に発行根拠があるが、赤字国債は同法によって原則として発行が禁止されている。この禁止を解除するため、政府は毎年「特例公債法案」を国会に提出し、承認を得て発行している。政府がこの法律を通すために、毎年血眼になって多数派工作を行っていると言っても過言ではない。

いずれにしても、どんな名目であれ国債が政府の「借金」であることに変わりはない。政府は毎年の予算に、国債の「利払費」と「償還費(元本の返済)」を計上している。2026年度予算で見ると、利払費が総予算の約11%、償還費が約15%、合計で約26%が国債関連の支出となっている。じつに総予算の4分の1だ。総予算を125兆円とすれば、国債関連費用だけで31兆円という計算になる。

なお、この利払費には政府が受け取る配当や利息などの収入は相殺されておらず、支払う費用だけが額面通り計上されている。さらに「償還費」について言えば、例えば米国の予算にはこの項目がない。償還期が来れば「借り換え債」を発行して対応するため、一般会計の予算にわざわざ償還費を計上する必要がないのだ。国家予算に償還費用をわざわざ計上しているのは、主要国ではほぼ日本くらいだろう。まさに「ガラパゴス日本」の象徴だ。

要するに、財政法を改正(あるいは運用を変更)してこの仕組みを変えるだけで、予算書の上では莫大な財源が「捻出」できることになる。この分を投資に回せば経済は成長し、結果として税収も増えるため、そもそも「つなぎ国債」を検討する必要すらなくなるのだ。どうして日本の主流派の政治家や財務省は、こうした柔軟な発想をしないのだろうか。これが個人的な強い疑問である。

世の中は激しく変化している。現在の財政法が制定されたのは1947年3月31日、憲法が施行されたのは同じ年の5月3日と、どちらも約80年前のものだ。時代に合わなくなった古い衣服を、大半の日本人が未だに「後生大事」に着続けている。この思考の硬直化こそが、日本没落の一因である気がしてならない。