鴨下一郎・元環境相

 旧民主党から政権を奪取した安倍政権は、アベノミクスの「3本の矢」に取り組んできた。最も重要だったのは「異次元の金融緩和」だったと思う。リーマン・ショックや東日本大震災、東京電力福島第1原発事故などで経済が低迷する中、新内閣誕生を織り込んで株価が上がり、ドル円相場が円安に向かった面もあるが、役割を果たせていなかったそれまでの政治を安定させたという点で安倍晋三首相の再登板には意味があった。

 やや右寄りだと言われてきたが、北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、中国とは尖閣諸島を巡る課題を抱える中で、国民がそれを望んだのだろう。米国のトランプ大統領の登場や英国の欧州連合(EU)離脱「ブレグジット」など世界のトレンドを見ても、それに先駆けて右寄りの政権を作ったのは外交的にも経済的にも成功だった。

良好な安倍・トランプ関係

 今後政権はどうなるのか。最も注目すべきなのは日米関係、とりわけ安倍・トランプ関係だ。

 2016年にトランプ氏が大統領選に勝利すると首相はいち早くトランプタワーに駆けつけ、関係構築に努力した。

 象徴的な出来事の一つが、今年春のトランプ氏来日の際に行われたゴルフだ。直後の首相のイラン訪問についてトランプ氏との間で話し合ったことが大きい。イランの問題で日本の首相が米国との間を取り持つということは今までにない。2人の首脳の関係性において世界の舞台回しがされ始めた事例として特筆すべきだろう。

 20年の米大統領選がどうなるかは我々には予想できないが、トランプ氏が再選されるのであれば、首相は続投し4選を目指すべきだ。

 平和の精神や安全保障、経済、気候変動などの面で日本が発信力を増し、世界に貢献していくには、今の日米関係は非常に重要だからだ。今まで首相とトランプ氏が築いてきた友情は今や日米の貴重なインフラなので崩すべきではない。

トランプ氏再選がない場合は

 しかし、トランプ氏が再選されない場合はまた別の発想をしなければならない。首相がトランプ氏と仲が良かっただけに、大統領が代われば日本も別のリーダーが新たな…