政府は21日、全世代型社会保障検討会議の第3回会合を首相官邸で開き、パートなどの短時間労働者への厚生年金の適用拡大について中小企業団体などから聞き取りを行った。中小側は適用拡大に難色を示した。政府は現行要件のうち、企業規模について「従業員501人以上」を「50人超」に引き下げる案を軸に与党と調整を進める方針だ。経団連は政府方針を支持しており、経済団体間の対立の構図が鮮明となった。

 検討会議で日本商工会議所の三村明夫会頭は「消費増税、最低賃金の引き上げなど、中小企業にとって多くの負担増が発生している。その上に厚生年金の適用範囲の拡大が来ると。この負担は恒久的だ。だれが負担するのかよく考えた上で慎重に対応してほしい」と苦言を呈し、その後、記者団に対し適用拡大について「反対だ」と明言した。

 全国中小企業団体中央会の森洋会長は「中小事業者にとって簡単にはいかない」とクギを刺した。中小側がそろって難色を示すのは、保険料が労使折半で負担が増すからだ。

 現行は、短時間労働者については従業員501人以上の企業で週20時間以上働き、月収8万8千円以上などの条件を満たすと強制的に加入する。政府は企業規模要件を緩和することで適用範囲を広げ、年金財政の基盤を強化し、低年金・無年金者を減らしたい考えだ。

 厚生労働省は企業規模の要件を緩和した場合の影響を試算。「50人超」にした場合、新たに65万人が適用となり、現役男性の平均手取り収入に対するモデル世帯の年金受給額の割合を示す給付水準「所得代替率」は0・3%増加すると推計している。ただ、事業主負担は1590億円増える。

 政府と同じ方向を向いているのが経団連で、「企業規模の違いによって社会保険の扱いが異なることに合理性はない」として撤廃を求めている。この日は連合からもヒアリングを行い、神津里季生(りきお)会長は「すべての労働者を原則適用させ、企業規模や非適用業種の要件も撤廃すべきだ」と述べ、適用拡大の政府方針を支持する考えを示した。

 自民党内では企業規模要件の緩和を容認する声が大勢だが、「501人以上から、いきなり50人超というのはいかがなものか」と段階的緩和を求める議員が少なくない。このため、まずは「100人超」にした上で、「50人超」にする案が浮上している。(坂井広志)