• ポイント還元額は1日平均12億円強、中小店舗の約4割が制度登録
  • IMFも追加財政政策として増税影響緩和の臨時措置延長を提言

消費増税対策として10月に導入したキャッシュレス決済のポイント還元制度の利用が当初の想定を上回るペースで拡大している。政府が経済対策で制度拡充に向けた追加予算措置に踏み切れば、キャッシュレス決済普及にさらに弾みがつく可能性がある。

経産省によると、中小店舗への同決済導入を支援する同制度開始から2カ月経過した12月1日時点でポイント還元事業への登録加盟店数は86万店に達する見込み。登録完了を待っている事業者を含めると、同制度対象となる中小の製造、卸・小売り、サービス業の200万店の約4割超となる。

PayPal Demonstrates Shopping Service Using Smartphones At A Nescafe Store
携帯でキャシュレス決済する消費者Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

政府はキャッシュレス普及促進と10月の8%から10%への消費増税に合わせた需要の反動減対策の一挙両得を狙って、中小店舗でのキャッシュレス決済に対し、2-5%を還元する制度を導入。決済手数料や端末への補助も含め今年度2798億円の予算措置を講じた。諸外国に比べて低いキャッシュレス比率を25年に40%、将来的に80%に高めることを目標にしている。

コンビニ大手では、制度開始以降キャシュレス決済の比率が高まった。セブンイレブンでは8月の35%から10月に42%に、ファミリーマートでは9月の20%から直近は25%に、ローソンは9月の20%から10月の26%にそれぞれ上昇した。

野村証券の美和卓チーフエコノミストは、「当初、中小店舗にキャッシュレス決済の普及が進んでいないと言われていたのが、土壇場でどどっと広まってきて、10月に始まってみると関心も高まっている状況が確認されている」と語った。

ポイント還元、予算上回る可能性

経済産業省の津脇慈子キャッシュレス推進室長によると、11月4日までのポイント還元額は1日平均12億円強、決済対象金額は同310億円。これを前提に単純計算すると年度内にポイント還元額は2000億円を上回り、決済手数料や端末の補助も含めると年度予算を上回る可能性もある。津脇室長は、予算内に収まるか精査しており、仮に不足する場合には、財政当局に予算積み増しを求める意向を示した。

安倍晋三首相は今月、国内景気を下支えする経済対策の策定を指示、自民党の二階俊博幹事長は10兆円規模の補正予算が必要との見解を示した。政府は来年6月に終了するポイント還元制度に代わり、来年9月にもマイナンバーカード保有者に対してキャッシュレス決済を用いたポイント還元制度の導入も検討している。国際通貨基金(IMF)は短期的な経済対策を容認する姿勢を示すとともに、追加的財政政策として消費増税対策の延長などを挙げた。

国難のブレイクスルー

日本で主に使われてきたキャッシュレス決済手段はクレジットカードだったが、電子マネーやQRコードも含め1000を超える決済事業者が同制度に登録されており、キャッシュレス決済手段の多様化も見込まれる。QR決済利用動向を調べるMMD研究所の調べによると、普段の支払いは現金が89.7%、クレジットカードは74.8%、交通系電子マネーは34.5%、QRコード決済は22.5%。

新たに台頭しているQR決済事業者の大手、ソフトバンクやヤフーなどの共同出資するPayPayは、同社は昨年10月のサービス開始から1年余りで登録数は2000万人に達した。

日本総研の岩崎薫里上席主任研究員は、「人間の習慣を変えるのはすごく難しく、それを変えるためのインセンティブの一つとして今回の取り組みは重要」と指摘。その上で「少子高齢化とか財政難とか抱える中で一つのブレークスルーがデジタル化の進展だ」とし、キャッシュレス進展は「経済活動の効率化を高め、人手不足に直面する企業の生産性向上に寄与する効果がある」との見方を示した。