米国の2020年度会計予算が20日に成立した。これによって、毎年話題になる政府機関の閉鎖は避けられる。予算成立に伴って、米国の宇宙軍創設の予算も手当が完了した。個人的にはこちらに関心がある。国防予算の総額は約7380億ドル(約80兆円)。これは国防権限法によって規定された総枠。時事ドットコムによると米議会は「トランプ氏が提唱する陸海空軍などに並ぶ宇宙軍創設を承認。急速な宇宙開発で、米国の軍事的優位性を脅かす中国への対抗姿勢を鮮明にした」とある。トランプ大統領はワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地で行った署名式で、「宇宙は最も新しい戦闘領域だ」と指摘した。

 宇宙軍の創設はこの分野で先行する中国を意識したものだろう。米中の貿易摩擦も実は宇宙の開発競争を意識しているのではないか、個人的にはそう思っている。中国は今年の1月、月の裏側に無人衛星を着陸させた。直接電波の届かない月の裏に、無人とはいえ衛星を着陸させた技術は相当なものだろう。この無人着陸には、中国の宇宙開発にかける強い意志が隠されている。仮に月の裏面から米国のミサイルを狙ってレーザービームを照射すれが、米国には対抗する手段がない。宇宙の支配権を握れば軍事上、絶対的な優位に立てる。宇宙の支配権は核抑止力の比ではない。宇宙を支配する国が世界の覇権を握るのである。

これに気づいたトランプ政権は、遅れをとった開発競争の時間を稼ぐために貿易戦争に打って出た。中国といえども、経済力はいまのところ米国の後塵を配している。中国の宇宙開発は経済成長に支えている。これに歯止めがかかれば、宇宙支配の野望ははかなく消える。トランプ政権が戦略的に仕掛けてきた貿易戦争をなんとしても回避する以外に手はない。これが収束に向かいつつある米中貿易戦争の由って来る淵源ではないか。国防予算の総額は日本円にして80兆円に上る。巨大な金額である。安倍政権は米国の宇宙軍とも歩調を合わせようとしている。宇宙戦争がSFから現実に飛び出す時代が来るのかもしれない。