Nathan Layne, James Oliphant

[ジョージア州シダータウン 12日 ロイター] – 7日、説教壇に立ったブライアン・クリスプ牧師はジョー・バイデン新大統領のために祈りを捧げ、隣人愛について心をこめた説教を行った。だがバプテスト派に属するクリスプ牧師は、ひとたび教会を離れれば強い愛国心を持つ共和党支持者となる。 

牧師が住むジョージア州北西部に広がる田園地帯のシダータウンは、共和党新人の下院議員であるマージョリー・テイラー・グリーン氏の地元だ。同氏は、11月の選挙で圧勝を収めた。しかし、2月4日、民主党優位の連邦下院において、所属する委員会から除名された。選挙前にソーシャルメディアを通じて民主党議員に対する暴力を煽動したことなどが理由だった。同議員の影響力は低下し、地元の有権者はこの措置に不満を抱いている。 

民主党が何よりの大義名分としたのは、グリーン氏による9月のフェイスブックへの投稿だ。

画像には、民主党の女性下院議員3人の顔写真の脇でグリーン氏がAR15自動小銃を誇示する姿が合成されている。この投稿はその後フェイスブックにより削除されたが、キリスト教徒に対し、「この社会主義者たちに攻勢を仕掛ける」ことを呼びかけるものだった。

だが、クリスプ牧師は、この投稿を3人の公職者(すべて有色人種の女性である)に対する脅迫とは捉えず、彼自身のコミュニティの生活を守ろうとするものだと考えた。

「(この投稿は)私たちアメリカ人は何者なのかという力強い姿勢を促すものだ」。アトランタ北西部、人口1万人のシダータウンで昼食をとりながら、牧師は話した。「ああいう連中がやって来て、この国を変えてしまうことを放っておけないんだ」

<トランプ支持議員や有権者が共感>

11月の大統領選挙での敗北を受けて、深刻なアイデンティティの危機に苦慮する共和党のなかで、ドナルド・トランプ前大統領の熱心な支持者であるグリーン下院議員は注目株だ。共和党主流派はグリーン氏や彼女に似たタイプの候補者が党の選挙結果に長期的なダメージを及ぼしかねないと警告する。しかし、彼女の過激な意見は、今もトランプ氏に忠実な多くの議員や有権者の共感を集めている。

ロイターは今月、ジョージア州第14選挙区で、共和党寄りの有権者30数名にインタビューを行った。グリーン氏を連邦下院に送り込んだ、農家・ブルーカラー労働者を中心とする地域だ。

インタビューに応じた有権者の半数以上が「民主党は米国を社会主義へと至る危険な道へと導いている」というグリーン氏の見解を支持すると述べ、彼女と同様に「選挙は盗まれた」というトランプ氏の根拠のない主張を信じていると答えた。死者が出た1月6日の連邦議会議事堂乱入事件に関してトランプ前大統領が弾劾裁判にかけられるのは不公正である、と彼らは主張していた。(編集注:弾劾裁判は13日に無罪評決が出された。)

インタビューに応じた有権者のうち、11月にグリーン氏に投票しなかったと答えたのはわずかに4人。ほとんどは、(来年の中間選挙でも)彼女を支持すると話している。

<妥協よりも闘争を好む>

ほとんどの人は、グリーン氏がかつて提唱していた奇妙な陰謀論、たとえば民主党上層部は小児性愛と食人趣味のサタン信奉者の一味であるとするQアノン理論については一笑に付している。彼らがグリーン氏を称賛するのは、人工中絶反対、銃保有支持、率直さといった政治姿勢である。

「彼女は思ったことをそのまま口にする。あのスタイルが好きだ」と話すのは、ジョージア州ダラスで土産物店のマネジャーを務めるマイケル・ペースさん(26歳)。

しかし、フロリダ州選出の元下院議員で、トランプ氏への反発から共和党を離党したデビッド・ジョリー氏は批判的だ。同氏によれば、グリーン氏はトランプ氏と同様、支持者が政治家を評価するのは、妥協や政策達成の実績よりも、闘う姿勢であることを理解しているという。46歳のグリーン氏は、ここ1ヶ月で中央政界での存在感を急速に高めている。

これに対し、民主党はさっそく、2022年の下院・上院中間選挙に向けて、グリーン氏を共和党の象徴的存在として対決しようとしている。カリフォルニア州やテキサス州などの激戦区で早くも展開されている広告キャンペーンでは、民主党は「Qアノンが共和党を乗っ取り、支持者を連邦議会に送り込んだ」とグリーン氏の動きをけん制している。

全国共和党下院委員会の広報担当者マイケル・マクアダムス氏は、グリーン氏とQアノンを共和党全体の象徴に見せかけようとする民主党の努力は、戦略的に的外れだと語る。同氏によれば、「取るに足りない陰謀論の地位を高めている」責任はグリーン氏を批判する民主党にあるという

マクアダムス氏は、「私たちは引き続き、雇用を損なう社会主義的政策を掲げる下院民主党への批判を続ける」と語る。

グリーン氏の代理人にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

共和党下院議員は、過激なグリーン氏と距離を置こうとはほとんど考えていない。一部の同党議員は、グリーン氏の見解を非難するどころか、グリーン氏が過去に行った9.11同時多発攻撃は連邦政府の陰謀であるとする主張などについて謝罪した際、同氏をスタンディングオベーションで称えた。

全米各地では忠実なトランプ支持者たちが活発に動いている。ここ数週間、激戦州であるアリゾナ、ミシガンでトランプ支持者が州共和党支部を掌握した。ルイジアナ、ネブラスカ、サウスカロライナ、ワイオミング各州の共和党は、1月6日の連邦議会議事堂乱入事件の煽動を理由とするトランプ氏の弾劾を支持した共和党連邦議員を非難している。

ジョージア州共和党の選挙戦略を担当するジェイ・ウィリアムズ氏はこうした風潮を憂慮している。彼は先日行われた2議席を争う連邦上院議員選挙で、いずれもトランプ支持者の共和党候補に対して民主党候補が予想外の逆転勝利を収めたことを指摘した。

共和党が今後も穏健派有権者に反感を与え続けた場合にどうなるか。ウィリアムズ氏は、共和党内のトランプ支持者が「他者と折り合いをつけることを学ばなければ、今後も負け続けるだろう」と語る。

<強い宗教色、銃規制への反発>

アトランタ地域で企業に勤務し、フィットネス・インストラクターを務めていたこともあるグリーン氏がいきなり連邦政界に進出できたのは、国内有数の保守的な地域である農業中心の選挙区のおかげだ。

この地域には、あちこちにプロテスタント教会がある。銃器の保有も一般的だ。地方選挙・連邦選挙では民主党候補が完敗を喫することも珍しくない。グリーン氏は昨年、共和党内の予備選挙で、地元の神経外科医ジョン・カーワン氏に決選投票で14ポイントの差をつけて勝利した。続く本選挙では75%近い得票率で民主党の対立候補を圧倒した。

彼女の選挙区の人種構成は白人が約85%と圧倒的に多く、大卒者の比率はわずか18%。全国平均の約34%に比べて大幅に低い。地元経済を支えるのは製造業と小売業だ。

人口密度は低く、73万2000人の住民が12の郡に散らばっている。だが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の患者数はジョージア州の全選挙区のなかで3番目に多く、ハーバード大学の追跡プロジェクトによれば、2月10日時点で6万人を超えている。

だが、地域の中核都市であるロームの商業地区では、ウイルスの脅威などすでに終ったかのように、大部分が通常営業の状態だ。中心街であるブロードストリート沿いの店舗やバーにはマスクをしない常連客が出入りしている。多くの店舗は、地方自治体が発したマスク着用令の執行に反対する表示を掲げている。

とはいえ、この選挙区の誰もが、来年には再選をめざすグリーン氏を支持する気でいるわけではない。

神経外科医のカーワン氏は、多くの支持者から2022年の再出馬を要請されている、と話す。だが彼は、グリーン氏の炎上商法的な政治スタイルの魅力を冷静に受け止めている。

大学でアメリカンフットボールの選手でもあった穏やかな物腰のカーワン氏は、「この選挙区でそれが求められているのであれば、私は勝てないだろう」と言う。「私は自爆覚悟の戦略には乗らない」

グリーン氏の選挙区の一部であるジョージア州デイド郡では、先週、郡共和党トップのトム・パウンズ氏が突然辞任した。ただでさえ党内でのトランプ氏への忠誠が揺らがないことに困惑していたパウンズ氏は、郡共和党がグリーン氏支持を決めたことで辞任の意を固めたという。

「(彼女の任期が切れるまで)あと2年も言いたいことを我慢しようという気にはなれない」とパウンズ氏は言う。

<「私のための政治家」>

だが、この選挙区の状況をもっと正確に示しているのは、このところシダータウンで行われている集会だ。クリスプ牧師のバプテスト派ライムブランチ教会から北に3マイル行くと、地元経営のガソリンスタンド兼コンビニエンスストアがある。毎朝、夜明け前になると「委員会」と呼ばれる地元の男性たちが集まり、ベーコン、ビスケット、シリアル食品を囲みながら、その日のニュースについて意見を交わす。

コンビニのオーナーで「委員会」の常連メンバーであるジェフ・ミンジさんは、グリーン氏を支持する理由について、話し方に「ビクビクしたところがなく」、トランプ氏と同様に左派に対する防壁になっているからだと話す

先日の朝も、プラスチック製のテーブルを囲んだ6人の男性は、民主党の仕業であると彼らが考えるさまざまな不公正に対する非難を代わる代わる口にした。その1つが、トランプ支持者による1月6日の連邦議会議事堂乱入事件への民主党の非難である。この事件では結果的に5人が死亡した。民主党はなぜ、昨年夏の「ブラック・ライブズ・マター」における暴力行為についても同じように強く非難しないのか、というのが「委員会」メンバーの疑問である。

グリーン氏もいくつか残念な発言をしているかもしれないが、それは民主党側も同じである、というのが男性たちの一致した意見だ。

自動車修理の指導員であるマイク・レスターさん(53歳)は、「もちろん彼女は過激だ」と言う。「だが、過激であるかどうかにかかわらず、彼女は私のような人間のために政治をやってくれる」

(翻訳:エァクレーレン)