ニュースには意味がよくわからないが、なんとなく思わせぶりなものがある。ロイターがきょう未明に配信した「WHO、イタリアでのコロナ初感染時期について再検査」もその一つ。タイトルだけ見るとイタリアの最初の感染時期に何か齟齬が生じているのかな、そんな感じがする。だが、問題はもっと大きいようだ。記事のリードには「新型コロナウイルスが2019年10月までに中国国外で循環していた可能性を示す研究に使われたサンプルが、世界保健機関(WHO)の要請で再び検査された。イタリアで研究論文を担当した2人の科学者が明らかにした」とある。新型コロナウイルスは2019年の11月から12月にかけて、中国武漢で確認されたのではなかったのか。それより前の「2019年10月までに中国国外で循環していた可能性を示す研究に使われたサンプル」って、一体何のことだろう。ウイルスの武漢起源説を否定する新たな研究か、疑問が次々と湧いてくる。

「新型コロナは19年12月に中国中部の武漢市で特定された。イタリアで最初の感染者は、20年2月21日にミラノ近くの小都市で確認された」、これが我々の知っている事実だ。それより前に「中国国外で循環していた可能性」、ウイルスの発生源は中国ではなくイタリア?この記事はウイルスの起源説に新しい発見を突きつけているかのようである。だが、それが分かる説明はない。どうやら研究者がイタリアの発生時期をめぐる研究論文を過去に発表しているようで、WHOはこの論文にある検体の再調査を行なったということのようだ。イタリアの国立がん研究所(INT)の科学部門のディレクターを務める共同執筆者のジョバンニ・アポロネ氏は、「WHOが研究に使った生物材料を共有し、独立した研究所で再び検査をできるかと尋ねてきたため、許諾した」と述べている。

中国はこの研究(元の研究か再検査か不明)を受けて、「(国営メディアが)新型コロナの発祥地が中国でなかった可能性があると報じた」ようだ。いつ報じたのか、時期は不明。本当に出来の悪い記事だ。ついでに言えば研究が発表された時期も不明、再検査の報告書は今年の2月に発表されているようだ。ここまで読むと頭が混乱してくる。思わせぶりだが、何を言いたいのかさっぱりわからない。バイデン大統領がウイルス起源説をめぐって情報機関に再調査を指示した後、欧米主要でディアで起源説をめぐる情報が飛び交っている。これまで武漢研究所説を陰謀論として退けてきた主要メディアが、これを機に武漢研究所起源説に傾いている。そうした中でこの記事は武漢説そのものを否定しているかのようだが、アポロネ氏は「公表された研究は、どれも発祥地に疑問を投げ掛けるものではない」とも話している。余計に頭が混乱する。翻訳が悪いのか、元の原稿が悪いのか。ロイターよ、しっかりせい。