[ブリュッセル 14日 ロイター] – 北大西洋条約機構(NATO)は14日、ブリュッセルの本部で首脳会議を開き、中国を西側諸国に対する安全保障上のリスクと認識し、同国の軍事的野心に対抗する姿勢を示す共同声明を採択した。

共同声明は「中国が示している野心的で強引な振る舞いは、規則に基づく国際秩序、および安全保障に対するシステミックな挑戦になっている」と表明。中国の権威主義と軍事拡大に対抗するようNATO首脳に呼び掛けたバイデン米大統領の外交的な勝利となった。

バイデン大統領は、加盟国が攻撃を受けた場合に他の加盟国が反撃する集団的自衛権の行使を定めるNATO条約第5条について、米国にとり「聖なる義務」と表明。「欧州は米国がここにいることを知っておいてほしい」と述べ、NATO脱退をちらつかせたトランプ前大統領とは一線を画した。

その上で、ロシアと中国を民主主義に組み入れようとする1990年代半ば以降の西側諸国の取り組みに言及し、両国は「われわれが望んだように」行動していないと語った。

ドイツのメルケル首相は、米大統領にバイデン氏が就任したことで新たなページが開かれた指摘。その上で、「サイバー空間における脅威のほか、ロシアとの結託などを踏まえると、中国を看過するわけにはいかない」とし、中国を潜在的な脅威として見なすことが重要になると述べた。ただ「過度に評価してはならない。適切なバランスを見出す必要がある」と語った。

NATOのストルテンベルグ事務総長は、バルト海からアフリカに至る地域で中国が軍事的な存在感を拡大させていることは、核抑止力を持つNATOが準備を整えておく必要があることを示しているとし、「中国はわれわれに迫っている。サイバー空間のほか、アフリカでも存在感を増大させているが、これに加え、われわれの重大なインフラに対しても大規模な投資を実施している」とし、「われわれは同盟として、こうした事態に共に対応しなくてはならない」と述べた。

また、今回の首脳会議で加盟国がNATO共通予算への拠出を増加させることで合意したことも明らかにした。

NATO首脳はロシアについて、ウクライナとの国境沿いに展開する軍部隊の増強のほか、サイバー攻撃などを巡る懸念を表明。リトアニアのナウセーダ大統領は、ロシアはベラルーシを「呑み込もうとしている」とし、NATOはロシア抑止に向け団結する必要があると指摘。バルト3国はロシア抑止に向け、米駐留軍の増加を呼び掛けると述べた。

バイデン大統領は16日にロシアのプーチン大統領とスイスのジュネーブで会談する。