今朝ニュースを見ておどろいた。朝日新聞(web版)には「菅首相、二階幹事長交代へ 衆院選は10月17日で調整」とある。日経新聞(同)は「二階幹事長の交代検討 首相、9月にも党役員人事」と見出しをとっている。読売新聞(同)は「首相、二階幹事長の交代など検討…党役員刷新で求心力の回復図る考え」。各紙に同様の記事が出ているから、どこかの特ダネということではないようだ。昨日の段階ですでに永田町で共有されていた国内政局の“最新情報”といったところか。それにしてもあれほど幹事長職に拘っていた二階氏が、あっけなく幹事長交代に同意したということは驚きだ。やはり政治は「一寸先は闇」ということか。傍目ではわからない力学が働いている。すべては間近に控えた総選挙のためということだが、それにしても久しぶりのサブライズニュースだった。

冷静にこのニュースを眺めると、改めて菅義偉という政治家の腕力というか度胸の良さが浮かび上がる。幹事長を巡っては一足先に総裁選挙への立候補を表明した岸田氏が任期について「1期1年、最長3年」と表明していた。すでに5年を経過した二階幹事長に対する宣戦布告である。岸田氏にとどまらない。党内には剛腕すぎる二階氏に対する反発が燻っていたようだ。そうした党内の雰囲気を見抜いたのだろうか、菅首相は二階氏と直接面談して幹事長交代を飲ませたのである。これで岸田氏は総裁選での論点を一つ失うことになる。幹事長交代は見方によっては“岸田潰し”にもつながる。幹事長交代と合わせて総選挙の日程も水面下で調整している事実が判明した。10月5日公示、17日投票。21日の衆議院議員の任期満了前に総選挙が終了する。解散権は行使せず、任期満了選挙になるようだ。野党もこれには反対できないだろう。おそらくこれで大半の政治日程は決まりだ。

幹事長交代の理由は若返りだ。二階氏には次の総選挙に立候補しないという噂もある。それはともかくとして幹事長を代え、閣僚や党役員に若手や女性を多く起用すれば菅内閣のイメージが一新される可能性もある。安倍派(細田派)、麻生派は異を唱えないだろう。役員人事は総裁選前に実施するとの見方もある。仮に次期幹事長に岸田氏を起用すれば、岸田氏は総裁選に立候補する大義名分を失うことになる。これが菅氏の最終的な着地点ではないか。党役員の一新で新鮮味を打ち出し、総裁選を回避、自民党の新総裁として10月の総選挙に勝利する。それまでに新規感染者を抑え込めれば、あり得ないシナリオではない。このシナリオの発案者が菅氏自身だとすれば、支持率が低迷し選挙に弱い菅氏を取り巻く雰囲気が一変する可能性がある。問題はそれを有権者がどう判断するかだ。菅首相、意外に弱くはないのかもしれない。