[ブリュッセル/ロンドン 25日 ロイター] – 欧州連合(EU)は25日、米国産の液化天然ガス(LNG)供給を拡大させることで米国と合意した。EUは天然ガス消費量の約4割をロシアに依存しており、今回の合意は「脱ロシア依存」への布石となる。 3月25日、欧州連合(EU)と米国は、米国産の液化天然ガス(LNG)のEU向け供給を増やすことで合

ロシアのウクライナ侵攻を受け、EUは年内にロシア産天然ガスへの依存度を3分の2に減らし、2027年までに化石燃料の完全輸入停止を目指す。

ホワイトハウスの声明によると、米国は2022年に少なくとも150億立方メートルのLNGを追加で供給。長期的には少なくとも2030年まで年間500億立方メートル前後の米国産LNGを追加供給する予定だ。

米政府高官は、追加供給するLNGの米国からの量や割合について明言しなかった。米国のLNGプラントはフル稼働状態で、欧州に送る米国からの追加供給の大半は別の輸出先から回す必要がありそうだ。

ICISのガス・LNGアナリストは「新規生産施設の建設には通常2-3年かかる。今回の供給は既存供給先から回すことになるだろう」と述べた。

ただ、契約済み供給の転用は容易でない。価格は既に高騰しているが、EUに回すには一段と上昇することが必要とみられている。仮に150億立方メートルの供給が可能だとしても、「2021年のロシアからの輸入は1550億立方メートルに達しており足りない」とING銀行のアナリストは指摘した。

<エネルギー市場の逼迫へ対応>

EU首脳は、エネルギー市場の逼迫への対応について、化石燃料の価格高騰による電力料金への影響緩和を含め、EU加盟国が講じた措置をEUの行政機関である欧州委員会が緊急評価する方向で準備を進めると表明した。

首脳会議の結論文によると、欧州委は電気料金の引き下げ措置が他の国の市場を混乱させないように確実にすべきとした。また、措置の一時的な性質や各国がEUの電力網とどの程度つながっているかも考慮する。

イタリアのドラギ首相は、ガス価格の上限設定案を含め、欧州委が全ての関係者と協議すると表明。記者会見で「欧州委が石油会社や電力会社、配電会社などの関係者と協議する」とし、「5月までに何らかの提案を行う予定だ」と明らかにした。

エネルギー価格の上限設定を巡っては、南欧諸国とドイツ・オランダが激しく対立。スペインのサンチェス首相が一時、「交渉が軌道に乗るよう、技術的な中断のため」首脳会議場を離れる場面もあった。

南欧諸国は、貧困家庭を保護するためにガス料金に上限を設けるよう要求。これに対し、上限を設ければ化石燃料発電への補助金として事実上、公的資金を投入することになるため反対、との声が上がった。

サンチェス首相は首脳会議後、スペインとポルトガルにはエネルギー値下げのため一時的な措置が認められると明らかにした。

欧州委のフォンデアライエン委員長は、これらの国に対する例外措置が認められたことを確認。「イベリア半島に対する特例措置だ」とした。

<天然ガスのルーブル決済は契約違反>

ロシア産天然ガスのルーブル決済について、ドラギ氏は、契約違反に相当するとの考えでEU首脳が一致したと述べた。

こうした中、ロシアのシルアノフ財務相は25日、天然ガスの買い手である欧米諸国がロシアの決定に従い、ルーブル決済に切り替えるよう期待していると発言。国営テレビで「ルーブル決済は外貨決済よりも信頼性が高い」とし、こうした動きは石油やガスの予算収入に影響を与えないと付け加えた。また、ロシアはいかなる状況下でも対外債務を履行できるメカニズムを持っていると強調した。

ロシア政府は25日、プーチン大統領が国営ガス会社のガスプロムに対し、欧州向け天然ガス輸出の代金をルーブルで受け取るよう命じた上で、4日以内に決済システムを構築するよう要求した。