ロシア大統領プーチン。7日にウラジオストークで開催中の「東方フォーラム」全体会合で講演した。その発言内容をメディアから拾ってみた。朝日新聞デジタルにはウクライナの穀物輸出に関連して、「輸出される穀物のほぼすべてが、トルコを除けば、途上国や最貧国でなく、欧州連合(EU)向けだ」と主張。その上で、最貧国支援のため、欧州への輸出を見直すべきだとの考えを示した。食料問題は「(自らの利益しか考えない)欧米の無分別な行動で引き起こされた」と一方的に主張。こうした振る舞いが続けば、「欧米の経済や社会(まで)が行き詰まり、全世界に予測できない結果をもたらす」と警告している。いつものことながら、我々の認識とは真逆だ。さらに驚くのは2月24日にはじめたウクライナ侵攻、「戦闘行為を始めたのは我々でなく、(ロシアは)終わらせようとしている」と正当化している。

これまでの経緯についてはキーウ撤退など見向きもせず、「我々は何も失っておらず、重要なのは主権を強化できたことだ」と堂々と主張する。面の皮の厚さは並じゃない。国内の経済情勢についてもインフレが落ち着き、失業率もかなり低いと説明。「政府は、最も困難な時期を乗り越えた」と自画自賛だ。ロイターはテーマごとに発言内容を伝えている。まずはノルドストリーム1。「オイル漏れがあり、爆発や火災の危険がある。タービンが機能しておらず、これがあれば明日にでも稼働させることができる。しかし彼ら(西側)は何も与えない」、すべてを西側の経済制裁のせいにする。修理担当のドイツ・シーメンスは6日、「(このような漏れは)通常、タービンの運転に影響を与えることはなく、現場でふさぐことができる」とコメントしている。どちらの発言を信じるか、言うだけ野暮だ。ウクライナに関しては「不必要で有害なもの、われわれの前進を阻むものは全てはねのけられる」とも語っている。

アジアに関する認識は米国などと共通している。以下はロイター。「世界ではアジア太平洋地域の役割が増すという構造変化が起きている」とし、アジアの将来性を称賛、アジア傾斜の姿勢を示している。15日〜16日にはウズベキスタンで開く上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせて中国、トルコ、モンゴルの3カ国首脳と会談を予定している。バイデン大統領のI P E Fに対抗してアジアでの囲い込みに精を出す。プーチンの一連の努力に関して今朝の日経web版には、笹川財団の渡部恒雄上席研究員のコメントが掲載されている。曰く「中国としては当面、ロシアとの関係を固めながら、ウクライナ戦争への支援には深入りせず、米国および欧州との関係をこれ以上悪化させないという微妙なバランスを取るのではないでしょうか」。子供のように一方的に強要するプーチン、習近平は「微妙なバランス」に軸足を置いているようだ。必死のプーチン、内情は大変なのかも・・・。