[東京 3日 ロイター] – 臨時国会が3日に招集され、岸田文雄首相は所信表明演説で物価対策に力を入れると改めて表明するとともに、支持率低迷の一因である世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題について説明責任を果たすと言明した。 

臨時国会の会期は12月10日まで。8月の内閣改造後初めての本格的な論戦で、野党は安倍晋三元首相の国葬や、政治と旧統一教会の関係について与党に説明を求める構え。値上げが相次ぐ中で経済対策の中身と規模、安全保障戦略の見直しを控える中で防衛力強化の財源も焦点となる。

岸田首相は衆院本会議で所信表明演説を行い、世論の賛否が割れた安倍元首相の国葬について「国民の皆様からいただいた様々なご意見を重く受け止め、今後に生かす」と述べた。旧統一教会との関係については「国民の皆様の声を正面から受け止め、説明責任を果たしながら、信頼回復のために、各般の取り組みを進める」と語った。

国内メディアが1─2日に実施した最新の世論調査で、岸田内閣は不支持率が軒並み上昇。読売新聞は9月上旬の前回調査から5ポイント上がって46%になった。支持率は5ポイント下がって50%だった。朝日新聞は不支持率が3ポイント上昇の50%、支持率は1ポイント低下の40%だった。いずれも国葬の実施や旧統一教会問題への対応が影響した。

この日の演説草案は当初、「現在社会的に問題が指摘されている団体」としていたが、3日朝に一部が差し替えられ、「旧統一教会」と名指しした。

<電力料金「前例のない思い切った対策講じる」>

物価対策については、来年春にかけて「急激な値上がりのリスクがあるのが電力料金」と指摘し、「家計・企業の電力料金を直接的に緩和する、前例のない、思い切った対策を講じる」と述べた。負の側面が指摘される為替の円安は「半導体や蓄電池の工場立地、企業の国内回帰や、農林水産物の輸出拡大などに取り組む」と語り、逆にプラス面を活用する方針を示した。

物価が上昇する中で賃上げを実現するため、「賃上げと、労働移動の円滑化、人への投資という3つの課題の一体的改革を進める」と強調した。「官民が連携して、現下の物価上昇に見合う賃上げの実現に取り組む」と述べた。特に中小企業の賃上げを進めるため、公正取引委員会などの執行体制を強化し、価格転嫁を強力に進める考えを示した。

事実上の国際公約となっている防衛力増強では「5年以内の抜本的強化に必要となる防衛力の内容の検討、そのための予算規模の把握および財源の確保を、一体的かつ強力に進め、予算編成過程で結論を出す」との従来方針を繰り返した。

◎その他の主な発言

・エネルギーの安定確保:原子力発電の問題に正面から取り組む。

・成長分野への学びなおし支援、5年1兆円に拡充

・同一労働同一賃金、一層徹底する

・半導体:日本だけで10年間で10兆円増が必要とも言われるこの分野に官民投資を集める。

・日中関係:建設的かつ安定的な関係を双方の努力で構築する。

・日ロ関係:ウクライナ情勢で厳しい状況ではあるが、領土問題を解決し、平和条約を締結する方針を堅持する。

・日韓関係:健全な関係に戻し、さらに発展させていく必要があり、韓国政府と緊密に意思疎通していく。

・日朝関係:拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化の実現を目指す。

・憲法改正:国会の場において、これまで以上に積極的な議論が行われることを期待する。

・衆院選区割り法案、今国会に速やかに提出

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