OPECプラスは5日、閣僚級会合を開き、11月から日量200万バレルの減産を実施することで合意した。これに対してバイデン大統領は「短絡的な決定で失望している」との認識を示した。ホワイトハウスが声明で明らかにした。プーチンのウクライナ侵攻で原油価格が高騰、世界中で猛威を奮っているインフレの元凶になっている。原油価格の高止まりを維持したい産油国、これに対して米国はロシアの戦費調達力に打撃を与えるため原油価格の引き下げに奔走している。OPECプラスの開催に向けてバイデン大統領は水面下で、関係国に圧力をかけてきたとも指摘されている。にもかかわらずOPECプラスは日量200万バレル削減することで合意した。中間選挙を控えたバイデン大統領の“おい願い”は完全に無視された格好である。

ホワイトハウスの声明は「世界経済がプーチン大統領のウクライナ侵攻に伴う悪影響に対処する中、バイデン大統領はOPECプラスの短絡的な決定に失望している」と、大統領の感情を前面に押し出している。ジャンピエール報道官は「OPECプラスがロシアと足並みを揃えているのは明白」とまで言い切った。OPECプラスにはサウジアラビアをはじめイラク、アラブ首長国連邦、クウェートなどこれまで米国と親密な関係にあった国々も含まれる。報道官の発言はこうした親米国を刺激することにならないのか、素人ながら心配になる。これに対して国家安全保障会議(NSC)のガービー戦略調整官は、「米国がOPECプラスなどへの依存度を低下させる必要がある」と、将来のエネルギー戦略に絡んだ発言にとどめているのと対照的だ。

日量200万バレルの削減、これでまた原油価格が高騰するのか。素人的にはそう思う。だが現実はどうやら違うようだ。ロイターは「しかし、実際にはすでに8月のOPECプラスの産油量は目標に対して日量360万バレル未達となっており、今回の減産幅はそれを下回る」とある。なんということはない。OPECプラスは削減という名目で日々の実際の産油量に近づけたに過ぎないのである。バイデン大統領ならびにホワイトハウスは、中間選挙を意識しながら意図的にOPECプラスを“反社会的勢力”として印象付けようとした。これは明らかな情報操作だ。GSのアナリストは実質的な減産は日量40万〜60万バレルにとどまると予想している。バイデン大統領の失望がフェイクだとは言わないが、情報が内包している印象操作には注意が必要だ。