8日に爆発・炎上、道路の一部が破壊されたクリミア大橋への何者かによる攻撃以来、プーチンの発言や動静が不可解に見えて仕方ない。爆発直後に「計画の立案者であり、実行者で、黒幕でもあるのは、ウクライナの情報機関だ」(ロイター)と断定、インフラを対象にミサイルの連続攻撃に打って出た。そのプーチンが14日には訪問先のカザフスタンで記者会見に応じ、「ウクライナを破滅させる意図はない」、「大部分の標的をすでに攻撃した」、「ウクライナに対する新たな『大規模攻撃』の必要はもはやない」などと述べている。まるで戦争の終結を予言しているかのようだ。この間、英国や米国の情報機関からは「ロシアのミサイルが底をついている」、「半導体不足で新たな戦車や兵器を作れない」といった情報が発信されている。情報戦争の一環だろうが、それにしてはリアリティーがある。

地元記者から特別軍事作戦を仕掛けて「後悔はないか」と質問されたプーチン、次のように答えている。「われわれは正しく、時宜を得た行動を起こしている」(ロイター)。ロシアの記者の質問にしては、質問自体が異例だ。ひょっとすると出来レースか。一連のプーチンの発言に対してゼレンスキー大統領は14日のビデオメッセージで、「ロシアはすでに敗北の雰囲気に包まれている」との感想を述べている。誰でもが閲覧できる一般的なニュースメディアを見ているに過ぎないが、ゼレンスキー大統領の思いがヒシヒシと伝わってくる。15日にはウクライナと国境を接するベルゴロド州の石油備蓄施設で爆発が起こっている。同じ日に同じ州の動員兵訓練施設で無差別の銃撃事件が発生した。ロシア国内も戦場化しつつあるかのようだ。ロシア国民の不満も限界に近づきつつある。誰が見てもプーチンに敗走の気配が漂っている。

こんな時だかからか、ベラルーシのルカシェンコ大統領はロシア軍の受け入れでプーチンと合意した。ロシア軍がすでにベラルーシ入りし、同国で戦車の調達をおこなっているとの報道もある。プーチンにしてみれば窮余の一策ということか。中国では5年に1度の党大会が開幕した。活動報告で習近平は台湾の武力統一を放棄しないと宣言。プーチンの権威が衰え始めた一方で、もう一つの権威はますます過激化しそうな雰囲気だ。その中国で「習近平打倒」の横断幕が出現、映像がSNSで配信された。横断幕は即刻撤去され、映像もすぐさま削除された。それでもこの一幕は3期目を迎える習近平の先行きを暗示している気がする。イランではヒジャブをめぐる抗議デモが反政府運動に拡大しつつある。権威主義は足元から揺らぎ始めているようにみえる。